大変ダ、大変ダ!
日記が見付かっタ!図書館にあッタみたいダ、
大変ダ、大変ダ!
新たナ駒ガ動いタ。悪魔ダ。悪魔ダ。悪魔が動いタ、
早く謎ヲ解かなければ
死ヌゾ。最初ニ殺サレルノ―――





ドンドンドン、

「アイチー!アイチってばぁ!早く起きなさいよー!」

朝からエミの仕事は始まっていた。それはほぼ日課になっている、アイチを起こす事。朝が苦手なアイチは中々起きないのだ。そのため、エミが毎朝起こしに行く。しかし今は館、しかも鍵が掛かっておりアイチの部屋の鍵を持っていないエミはただドアを叩いて呼ぶことしか出来なかった。

「アイ…」
「朝から何だ、騒がしい…」
「あっ…。櫂、さん…」

ちょうどアイチの部屋の隣が櫂だったため、櫂も朝には弱いのか寝癖をつけたままガチャリと部屋から出て来た。エミは思わず眉を潜めてため息をつく。

「アイチ、中々起きてこないんです。いつもなら私が部屋に入って起こすんですが、鍵が掛かってるので…」
「なるほどな…」

思わず櫂も唸ってしまった。と、アイチの部屋の中から何かが落ちる音が聞こえバタバタと騒く様子がわかった。櫂とエミは思わず互いを見て驚く。

「どうしよ、どうしよう!もうこんな時間だ、大学に遅刻しちゃ………」

寝癖をつけた状態のまま、いかにも、今起きました。という様子でアイチは部屋のドアをあけた。と、同時に廊下にいた櫂とエミと目があい固まる。

「………あれ…?」
「おはようアイチ」
「お、おはようエミ…?と櫂くん?」
「ああ」

ごちゃごちゃする頭を整理し、アイチは苦笑いをしながら戻るように部屋のドアをぱたんと閉めた。そして5秒後。部屋から叫ぶように騒ぐアイチの声が聞こえ、部屋の皆が驚いたのは言うまでもない。

*****

「だからちゃんと私言ってるでしょ、いい加減一人で起きなきゃだめだって」
「ごめんなさい…」
「だいたいアイチはいっつもそう言って…。この間なんてアイロン掛けてるのに電話のとこいってシャツ焦がしたばかりでしょ?もうちょっと自覚を持って―――」

朝食をとり終わり、これからどうするかを考えていた所突然エミの説教が始まった。それはとまる事を知らず、呆れながら、ため息をつきながら、アイチを正座させている。アイチはただ頷いていた。

「うひゃー、あれじゃあどっちが上かわかんねぇな」
「でもシュンってしてるアイチくん可愛いです」
「エミさんからの説教…!」
「喜ぶところなんかないから」

三和は見てて楽しそうに笑い、レンは怒られて俯くアイチに可愛いと言い、カムイは何故かうっとりしながら、ミサキはそんなカムイに引きながらエミとアイチの様子を見ていた。櫂は何やら新聞を読んでいるのかまだコーヒーを啜っていた。

「櫂、お前真面目だなー!さっすが弁護士(仮)か?」
「気安く話しかけるな」
「ひでぇ…」

櫂はバサリ、と新聞を広げめくる。三和がみる限り、それは古びた新聞でかなり色褪せている。汚れも目立ち、三和は「うわぁ」と声を漏らした。

「お前、よくそんなんで読めるな。てかいつのだよソレ」
「知らん。日付は何か零したのか汚れて見えないし、ただそこにあったから読んでただけだ」
「ふぅーん。…ってあれ、これってもしかして……」

そう言いながら三和はある一面に指を差した。目が悪いわけではないが、眼鏡を掛けていた櫂は指差された場所を見てみた。

「『名前の知らないとある孤島で行方不明になっていた7名が遺体で発見、誰一人として知ることがなかったこの島で一体何があった!?』」
「孤島だと…?」

三和がそう新聞を読むと一瞬にして大広間は静かになった。ミサキは新聞を見に行くと、続けてレンやカムイも見に行く。

「この新聞、それしか書いてないの?」
「ああ、なんか墨汁みたいな黒いのが掛かってて全く読めねぇ」
「せっかく何かわかるかと思ったのになー!」

それは偶然か、狙ったのか……。アイチはその新聞を聞き、ふと昨日見付けた日記帳を思い出した。悪夢の逸話、別名ナイトメア・アネクドート。

「そうだ、櫂くんちょっと話しあるんだけど…僕の部屋に来て貰ってもいい?」
「…ああ。いいだろう」

櫂とアイチは、大広間を出た。ゆっくりとドアが閉まる様子を…悪魔は見逃さなかった。


「櫂くん、これなんだけど…」
「日記帳か…?」

アイチは櫂を自室に招き入れた。この館の部屋はどれもドアがしまると自動的に中から鍵が掛かる仕組みになっていた。外からはスイコから渡された鍵と、マスターキーの二つしかない。櫂は日記帳の表紙に掛かれた文字を見つめた。

「悪夢の逸話……なるほどな、1942年に起こったまるで悪夢のような事実を日記帳にまとめていき、世間に知られていない話…つまりナイトメア・アネクドートと名付けたのか」

裏返しにすると隅に掛かれた文字を見付けて読んだ。そしてぱらりと中を開きアイチを見る。

「悪魔に幸せを願うな、か……。どうゆう意味だ?」
「うん、それも僕よくわからなくて……。それに七幸って…」
「まぁ何にせよ、この日記帳は他の奴らに見せるな」
「え?どうして?」

アイチが首を傾げて不思議そうに聞くと櫂は日記帳を裏返し、先程見た、隅に掛かれた文字に指を差した。

「“先導”と書かれているだろう。つまり、これはお前宛ての日記帳だ。それに、この日記帳は逸話なんだ、世間に知られてはいけない。広まってはいけないんだ」
「そ、そっか…」

そう言うと櫂は日記帳をテーブルの上に置き、まだこの館に慣れないから探索するぞ、と一言アイチを誘って部屋を後にした。バタンとドアが閉じ、自動ロックが掛かったアイチの部屋に影が映った。

*****

「アイチくーん!今から僕と一緒に館巡りしませんか?」
「え、あ…レンさ、」
「おい、今アイチは俺と館探索してるだろう。よく見ろ!」
「え?あぁ…何だ君もいたんですか、櫂。すみません僕興味ないものは眼中にないので」
「ああ、あいにく俺もだ」

ぽかんと口を開けてアイチは二人が何だか仲が悪そうだなと感じた。レンは年期が入った一眼レフのカメラを片手にし、何やら櫂はそれについてどうこう言っていた。バチバチと火花が飛ぶ中、ふと廊下を一人で歩くエミを見付けた。

「エミー!」
「っえ…?ア、アイチ…?」

何処かふらふらとした足取りで歩くエミに、アイチは眉を潜めて歩み寄った。顔色は随分と悪い。

「大丈夫エミ?どうしたの、どこか具合悪いの?」
「だ、大丈夫だよ、ただちょっと目眩がしただけだから…」
「大丈夫じゃないよ、部屋戻ろっか、一緒に行くから!」
「う…ん……」

アイチはエミの手を引き、今だに言い争う櫂とレンにぺこりとお辞儀をして部屋に向かった。アイチが握ったエミの手はどこか頼りなさそうにカタカタと震えており、そんな様子に胸の奥が苦しくなった。
いくら自分や、優しい仲間がいるとは言えエミはまだ高校生でそしていつ死ぬかもわからない状況の中にいるんだ、怖くて当たり前なんだろう。

「絶対に…絶対にお家に帰ろう。始まったゲームは止められないけど…必ず解こう…だから――」

俯いていたエミはその時、ようやく顔をあげアイチをみた。そしてふわりとアイチが微笑むとエミは笑顔を見せた。

「こうなったらアイチくん自身に決めて貰いましょう!」
「望むところだ!」
「「アイチ(くん)、どっちと館巡りを―――…」」

と、二人は意気揚々に後ろを向いたが、そこには誰もいなかった。その様子をいつから見てたのかは知らないが、二人をジトリと見て「ドクズ」と吐き捨てる様に言ってミサキは通り過ぎた。





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