櫂、アイチ、エミ、三和、カムイ、ミサキ、レンの7人はスイコ達が一旦部屋から出て行ったあともただ何か話すことなく目も合わせることもなく部屋は静寂に包まれた。だが先に耐え切れなくなったジャーナリストの三和はため息をつき手を挙げた。

「ま、まーこれからよろしくな!にしても……この館広いなー」
「悪魔が出るんでしょ」
「うぇ!?まじで?」
「アンタ…一応ジャーナリストなんだからそれ位知ってなさいよ」

どうやら今初めて知ったようで、三和は変なポーズをとり驚く。ミサキはそんな三和に呆れアイチはそんな二人が面白くて笑ってしまった。

「笑える話じゃないけどこの館は“悪魔の住む館”って言うんだって。多分、私達はこの館の謎と呪いを最初に解かないといけないみたい」
「ふーん…。悪魔ねー。何だそれ、食べられってか」
「そ、そうなの?私怖い…」
「大丈夫ですよエミさん!そんな奴俺が倒しますから!」

意気揚々と話すカムイはガッツポーズをしてみせた。エミはぱちぱちと拍手をしながら「カムイくんかっこいい〜」と言うとカムイはデレデレと「そんな事ないですよ〜」と言い始めた。
と、大広間のドアが開き再びスイコ達が入って来た。手には鍵を持ちどうやら準備が出来た様子である。

「皆様、長らくお待たせしました。お部屋の用意が出来たのでどうぞこちらへ」

鍵を一人一人に渡すと大広間から出て部屋の案内をし始めた。此処が大浴場、各部屋にシャワーは付いてるがたまに入るのも、と言いながらこちらが診療室、とまた淡々と長い廊下を歩きながら案内をする。

「そしてこちらが図書館になります」
「図書館?」

室内にも関わらず長い螺旋階段があり、長い廊下の隅にあった。見上げると扉があり、入口だと思う。スイコが言うにはざっと80万冊はあるらしい。

「なんか…館っーか別荘とでもいうかなんつーか…」
「滅多に人が来ませんので、何処も自由に出入りは可能ですので。ただし夜12時には鍵を閉めるので気をつけて下さいね」
「ちゃんと鍵をかけないと悪魔が怒っちゃうからねー!」

と、何処か楽しそうにレッカは言ったが“悪魔”という単語に皆反応し固まってしまう。

「あ、あの…この館には本当に…悪魔っているんですか…?」
「さぁ〜」
「さぁ〜、って…。お前らこの館の使用人なんだろ!そん位知っとけよ!」

レッカはまるで本当にわかりませーんとお手上げ状態で白々しく言う。カムイはそんなレッカに対しジタバタと暴れ始めた。

「私達は去年来たばかりだからよく知らないのよ。その間にコロコロと使用人変わるもんだから今だに目撃衝撃はないけど」
「なら70年前はどうだ」

コーリンが話し終わると同時に今まで黙っていた櫂が呟く。日が暮れはじめ、明かりをつけていない長い廊下には櫂のエメラルドグリーンの瞳がよく見えた。

「70年前、ね…。一つだけ教えてあげる。“選ばれし者”とは70年前にこの島で呪いを解くことに失敗しゲームオーバーになった者達の孫にあたる人達のことを言うわ」

コーリンは長い睫毛を震わせてそう言った。レッカは隣にいたスイコに「言っても良かったの?」と聞いた所、「いずれ知ることになったわ」と返された。愛想の無く、人と関わるのが嫌いなコーリンがこんな事を言うことに少し驚く。

「70年前にこの島の全ての謎を解けなかったから帰ることは出来なかった。そして今だこの島の謎と呪いを解くのにはまた新しい駒……つまりは“選ばれし者”が必要だったのよ」
「そ、それって、」
「じゃあ今日は疲れただろうから皆部屋に行った行ったー。ある程度道具は揃ってるから」

アイチが何か言おうとした瞬間、偶然なのか図ったのか、レッカに遮られてしまった。また明日聞き直そうと思いアイチも部屋に戻ろうとしたが図書館を見てみたくなり足をふっと、止めた。

「アイチ?」
「ごめん、エミ、僕ちょっと図書館行って来る!」
「え、あ、アイチ!?」

ぱたぱたと長い螺旋階段をアイチは上って行ってしまいそんなアイチの様子を見て伸ばしかけた手を下す。

「アイチってば言い出したら聞かないんだから…」
「意外と芯の強い子なんだね」
「ミサキさん…。強いと言うよりも意外と頑固なんです」

*****

「はー…。意外と長かったなぁ…」

やっと上まで辿り着き、アイチは深呼吸をして図書館の扉を開けた。中は真っ暗で本当に悪魔が出そうで身震いをしてしまう。

「やっぱりエミに着いて貰えば良かったかな…」

恐る恐る入り明かりのスイッチを探した。スイッチと言うよりもそれはレバー式で下に下げると明かりがついた。

「うわぁ…凄い数…!」

明かりが手前から順番につくと同時に綺麗に本棚に整理された図書館に息を呑んだ。奥まで続いておりアイチはゆっくりと歩き出す。

「あっ、この本読んでみたかったやつだ…!こっちも!」

欲しい本を見付けるなりアイチはさっきまでの恐怖が消え、今は本を見るのに夢中になっていた。

「これ確か、借りてもいいんだよね?あんまり多いと大変だから今日は三冊くらいで…」

三冊本を持ち上げた時、ふとアイチの目に止まる本を見つけた。そこの本だけ奥にあり覗いてみると色は霞み、何の本なのかわからない。

「一体何の本だろう…」

手を伸ばしゆっくりと色の霞んだ本を取った。古びており、かなり前のものだと思われる。埃を被っておりアイチが掃うと表紙には、

“悪夢の逸話”

と、タイトルらしきものが書かれていた。ぱらぱらと中を開くとどうやらそれは日記帳のようで裏返しにすると下の隅には小さく“1942.先導の選ばれし者へ”と書かれていた。

「これって…?もしかして…僕のおじいちゃんかおばあちゃんも70年前にこの島に…?」

借りようと思った本を持つのを忘れ、アイチは日記帳だけを手に長い螺旋階段を下りてゆく。もしかしたら、この島の何かわかるかもしれないと思ったのだ。先程スイコに案内された部屋に鍵を開け入る。どうやら皆隣の部屋らしくアイチは安心した。

「読んでもいいよね?」

一人で頷き、息を吸い込み日記帳を開いた。紙はヨレヨレになり色も黄色っぽい。そして書かれた文字を読んだ。


1942.日付がわからない。
今日初めて書く日記だ。この日記にはこの島に来て、一体何があったのか、謎か呪いか、そんな未知に溢れる島について淡々と書いて行こうと思う。
まず初めに自分達は騙された。一体誰が何の目的で考えたのか知らないが、船は転覆し、気が付けば自分達はこの呪われた島にいた。

前書きは置いておくとする。とにかく今、この現状を早く理解して欲しい。
最初の謎はこの館…悪魔の住む館だ。詳しくは言えないが悪魔には絶対に「七幸」を願うな。悪魔に幸せを願うな。これは絶対だ。さもなくば悪魔に幸せを与えられる。
辛く酷い幸せだ。悪魔を殺せ。いいか先に悪魔に殺される前に殺すんだ。悪魔は人間の形をしている。気をつけて、死にたくなかったら……殺すんだ。


どうやらこの日記にはこの島の事、館のことについて書いてあるようだった。アイチは知らずの内に冷や汗をかき、震えていた。まるで心臓をわしづかみにされたような感覚だった。

「僕は……生き残れるのかな……」

ゆっくりと瞼を閉じた時、脳裏に映像が焼き付いた。それはこの館のようで、そして誰かわからないが何かから逃げるように走っているようで――。
『幸せをあげる』と声が聞こえたと同時に叫び声が聞こえた。顔は暗くてよく見えないが、先程まで走っていた人物は床に倒れ込んでしまう。
暗くてよく見えないはずが、はっきりと鮮明に“赤”が写った。バケツいっぱいにぶちまけたようで……。
そう。そこには、右脚、左脚、腹部、右腕、左腕、右目、背中、をナイフで刺されていた。右目はナイフでえぐり取られ顔半分は真っ赤に染まっていた。腹部に至ってはナイフが見る限りでは10本は突き刺さっていた。そしてえぐり取られた右目に更に誰かがナイフを刺し高らかに笑い声を上げていなくなった。

「っわぁああぁあ!!!」

部屋の中央にあったガラスのテーブルから伏せていた頭をあげアイチは叫び声をあげて起きた。冷や汗を物凄くかいておりそして吐き気がした。呼吸もうまく出来ない。思わずトイレに駆け込んだ。

「な、に今の…!?」

ゆっくりと振り返り、テーブルの上に置いてあった日記帳を見た。アイチは息を呑み込み強張りながら口を動かした。

「始まって…る……」






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