俺達は騙されてしまった。
まさかこんな島に来るなど思いもしなかった。選ばれし者の役目はこの島の全ての謎と呪いを解き、生き残って自分のいた場所に帰ることなのだ。

“悪魔の住む館”

と名付けたが本当の名前は×××××と言うらしい。この館には本当に悪魔が住んでいて俺らに幸せを下す。幸せを望むな。ああ、そうだ。これは俺と×××との二人だけの秘密だ。

『ナイトメア・アネクドート‐悪魔の逸話‐』

をタイトルに×××が日記をつけていく事にした。これはこの島に来た奴しかわからない本当の逸話を毎日記したんだ


櫂の祖父、1942年最初の手紙より抜粋。






ギィイイィイ……と不気味な音を立ててドアは閉まった。その音にアイチとエミは身体をびくりと揺らして驚いた。と、真っ暗になった部屋に明かりがついた。上を見上げると贅沢にあしらわれた宝石がきらきらと光り、豪奢なシャンデリアが光った。

「いち、にー、さん……あっ。これで全員だねー!」
「良かった此処にちゃんと辿り着けて」
「当たり前じゃないの、選ばれし者なんだから」

と、明かりが就いたとほぼ同時に女の人の声が響いた。
最初に声をあげたのは赤い髪を左右に縦にロールし、丸い髪飾りをつけたエミと同じ位の歳に見える16歳ほどの少女だった。
次に声をあげたのは水色のショートヘアをした和らげのある大人の女の人だった。
そして最後に声をあげたのは、金色の髪をたなびかせ片方だけをあげて何処か強気のあるアイチと同じ位の歳の女の人。

「初めまして。ようこそいらっしゃいました、この館の使用人長のスイコです。三姉妹の長女で、主にこの館のあらゆる場所の責任者になるわ」

と、スイコと名乗った女性は深々と頭を下げてアイチの方をみてにこりと微笑む。その表情にアイチは思わず顔が熱くなるのを感じた。

「次は私ねー!私もこの館の使用人で三姉妹の末っ子のレッカでーす。私はこの館の掃除担当、あんまり散らかさないでね」

と、レッカと名乗った女の子は可愛らしく右手の人差し指を前に突き刺し、小さく左右に降ってみせた。

「…最後に私ね。私は三姉妹の次女、コーリン。私も同様、この館の使用人で主に料理の担当よ」

そう最後に名乗ったコーリンは腕を組み、その後金色の長い髪をさらりと掻き分けた。途端にちょうどアイチと目が合い、アイチが微笑むと眉を潜めていたコーリンはボボッと顔を赤くしそっぽを向いてしまう。

「あっれれー?コーリンどうしたの?顔が真っ赤だよ〜」
「う、うるさい!赤くなんかないッ!!」

騒ぎ出したコーリンとレッカをまるで母親のように微笑ましく見たスイコはアイチ達の方に振り向き手招きをした。

「“選ばれし者”の皆様が集まっている広間に案内します、どうぞこちらへ」

スイコは前に歩き出し、長い廊下を歩き始めた。アイチ達が入ってきた場所はただっ広く、中央に何か…まるで悪魔避けの魔法陣が描かれた絨毯だった。そこを通り過ぎ天井には小さいながらもきらきらと光るシャンデリアの下を歩く。
スイコ、コーリン、レッカはさすが使用人といった所だろうか、メイドまではいかないが、ふんわりとパニエのふくらんだワンピースに白いフリルのついたエプロンをしている。
スイコは水色、コーリンは黄色、レッカは赤色、のリボンを胸元につけていた。

「あ、あの…スイコさ、ん…僕達は……その、今日からどうすれば……」
「招待状にも書いてあった通り“選ばれし者”のあなた達にはこの島の全ての謎と呪いを解いて貰います。それまではこの館に住んで貰います」

カツン、とスイコの靴の音が長い廊下に響く。そして振り向き心配そうな表情をしていたエミを見て、大丈夫、とでも言いたそうに笑った。

「―――では、此処が主に皆様に集まって頂く広間になります」

スイコが片手でまるで執事がするかのように弧を描きお辞儀をする。そしてそれと同時に大広間のドアを右をコーリンが、左をレッカが開けた。

「皆様、大変長らくお待たせ致しました。これで選ばれし7人が揃いました。――まずは自己紹介から始めましょうか」

コーリンは突っ立っていたアイチやエミを後ろから、「ほら入った」と言って押し部屋に入れた。確かにそこには使用人の3人を抜き、アイチ、櫂、エミを入れた7人がいた。

「あーやっと来たのかー!荒波だとか船が転覆したとか聞いたから心配したけど…大丈夫そうだな!良かった良かった。あ俺、三和タイシ。職業はジャーナリスト。よろしくな!」

と、真っ先に自己紹介をしたのは明るく、元気のいい青年であった。見るからに櫂と同じくらいの歳だ。すると三和の向かいのソファーに座り本を読んでいた薄紫色をした長い髪の少女はため息をつき口を開いた。

「だからさっきからアンタ一人でにちょこちょこと煩かったのね。……私は戸倉ミサキ。職業…と言うか大学生。主に物理の研究をしてる」

向かいにいた三和は一人でに「俺うるさかったかな?ねぇねぇミサキちゃ「煩い」と話している傍からミサキに遮られてしまい不満げな表情をした。

「あっ、僕も大学生なんです、医学部なんですが…じゃなくて、僕は先導アイチと言います。えっと…これと言って特技はないんですがよろしくお願いします!」

自己紹介に慣れていないのかカチコチとした動きで思い切りお辞儀をして後ろにいたエミは少し呆れながら「面接じゃないんだから…」と言われアイチは顔を赤くしてしまった。

「私は先導エミって言います。まだ16歳の高校生です。隣にいるのは私の一応、兄です」

“一応”という言葉にアイチはエミの方を見てわたわたし始めた。その様子にその場にいた全員が、一応だな、と頷く。そしてエミを見ていた少年と目が合い、エミは親譲りかそれとも兄譲りか、先導家特有のエンジェルスマイルをえへっ、とばかりに撒き散らした。

「よろしくね」
「よ、よよろしくお願いします!!なんてエンジェル…!なんて女神なんだ眩しい…!お俺、葛木カムイって言います!よろしくお願いしますエミさん!あとアイチお兄さん!」

バッ!と90度の角度でお辞儀をし、完全に目はハート状態でエミに一目惚れをしていた。アイチは良くわかっておらず、相変わらずの鈍さで「よろしくね」と先導家特有エンジェルスマイルをエミ同様カムイにして見せた。一瞬にして大広間はお花畑状態になる。

「ほ、本当にお兄さんですか……!?」
「アイチ、あんた性別間違えてるんじゃ…」

と、次々にアイチの性別を批判し始めた。アイチがあまりにも他の人と話し始め、面白くなくなったのか櫂は不機嫌な表情になっていた。それを見た三和が思わず笑う。

「はーい、じゃあ次は僕ですねー」

と、だるそうに手をひらひらと挙げた赤い髪の青年が声をあげた。口には棒つきのキャンディーを含んでおりそれをバリバリとかみ砕き口を開く。

「特に言うことはないですが僕の名前は雀ヶ森レンと言います。職業はーえーっと…何でしたっけ?ああ、写真家です。よく昔から写真を撮っていたらいつの間にか写真家になってました。うーん何故でしょう」

と、何故か首を傾げ腕を組み唸り始める。掴めない性格のようで思わず皆も不思議そうにレンを見た。

「最後に俺か…。俺は櫂トシキ、弁護士見習いだ。俺は70年前にこの島に行ったっきり帰って来なくなった祖父の残した手紙で来た。言うなれば謎、呪い……いいやこのふざけた茶番をする主催者を暴きにきた」

途端に櫂が言い終わると静かになってしまった。唐突に言われたのか皆、目を丸くし櫂を見る。

「ねぇ、コーリンどうゆうこと?」
「知らないわよ、アイツ…櫂って奴はこの島を…」

ひそひそと話していたレッカとコーリンを止めスイコは前に足を踏み出す。相変わらずスイコは表情を変えず微笑んでいた。

「理由は何はともあれ、選ばれし者の皆様ようこそいらっしゃいました。皆様にはきちんと一人一人のお部屋を用意してありますので悪しからず。一応言っておきますが、この島の全ての謎と呪いを解かない限りこの島から抜け出すことは出来ません。では――存分に…楽しんで下さいませ」

ようやくスイコの表情が変わったと思いきや今度はもっと深い……まるで嘲るかのように一瞬目を見開き笑い掛けた。








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