時ハ来タリ――…。準備モ出来タ

後ハ選バレシ駒ヲ集メテ
呪ワレシ島の謎ヲ
解イテ貰オウ

サァ生キ残ルノハ
一体ダレダロウカ―――?











「っわぁ……!見てエミ!海が透き通ってるよ!」
「わぁ本当だ…!綺麗だねアイチ!」

ゴァアアアッと客船のエンジンが水飛沫をあげて海の上を走る。そして船の手すりに掴まり海を眺めるのは二人の兄妹だった。
僕の名前は先導アイチ。今年大学の医学部に入ったばかりの今年で19歳になる。隣にいるのは妹のエミ。僕とエミは今、とある南の島に向かっている。
ちょうど一ヶ月前。夢であった医学部に入学出来き、祝いとして家族で食事に出掛けた。エミもお母さんも心から喜んでくれて、僕も嬉しかった。そのレストランではサービスとしてくじ引きがあったんだ。そこで僕が当てたのは“南の島の旅”という旅行チケットだった。

「にしても、アイチってば運の使いすぎじゃないー?大学に合格、タダでの旅行…!あーあお母さんも来れたら良かったのにねー」
「本当、そうだよね」

どこか悔しそうにエミは船の手すりにもたれ掛かりながら言った。家族4人までの旅行チケットだったけど、あいにくお母さんは一ヶ月以上前から予約していたお父さんとの結婚記念日旅行でイタリアに行く事になっていて、仕事で滅多に会えないお父さんと旅行に行ってしまっている。

「まぁ私達だけでも楽しもっか!アイチと二人きり〜!」
「あはは、エミどうしたの?そろそろ着くかなー」
「ねー早く着かないかな〜」

いくつになっても仲の良いアイチとエミは互いに笑い合いながら船の行く先を見ていた。と、さっきまで明るかった空に雲がかかり薄暗くなって来た。

「雨降りそう…!アイチ、中に入ろう?」
「うん、」

二人が中に入るとエミの予想通り雨が降ってきた。二人は部屋の中でまだ着かないのか、とばかりに何処かそわそわと落ち着かない様子だった。雨が一層強くなり船の揺れが段々と酷くなる事に心配そうなエミの表情に気付いたアイチは飲み物を買ってくると部屋を出た。


「なんだか僕も心配になって来ちゃった……」

ペットボトルを両手にとぼとぼと歩いていたアイチはふと足を止めた。そして辺りをきょろきょろと見渡すと首を傾げた

「………あれ?」

間違いなく、アイチは迷った。自分とエミがいた部屋の場所がわからなくなってしまったのだ。

「ど、どうしよう…!えと、確かこっち…っわぁ!」

ドンッ、と曲がり角でアイチは同じように曲がって来た人とぶつかり尻餅をついてしまった。

「ったた…!っあ、すみません!」

ぶつかった事に気付きアイチはハッと顔を上げた。ぶつかった相手は立ち上がりアイチが落としたペットボトルを拾ってくれた。

「いや、俺は大丈夫だ。むしろお前こそ怪我はないか?」

アイチのリトルマリンの瞳とぶつかった相手のエメラルドグリーンの瞳が合った。暫し二人は何かに惹かれ合うかの様に見つめ会い、我に帰ったアイチはわたわたと手を引かれ立ち上がった

「あ、ありがとうございます…!」
「ああ。…先導…アイチ…?」
「えっ?」

と、相手はしゃがみ込み立ち上がるとアイチに学生証を渡した。ぶつかった時に落としたんだ、と思い受け取った。

「何度もすいません…、あはは…えと……」
「俺は櫂…櫂トシキだ。一応弁護士をしている、今年で20歳になる」

と、なんとも律儀にも名刺渡してくれた。確かにそこには弁護士と櫂トシキと書いてあった。自分と大して歳が変わらないのにも関わらずアイチは尊敬の眼差しを櫂に送った。

「べ、弁護士さんなんですか…!?すごいです…!!」
「と言いたい所なのだがあいにくそれはまだでな。弁護士を目指しているんだ」
「えっ?でもこれ…」
「悪いな、気が早い先生でな。名刺だけはいっちょ前に作ってくれたんだ」

堅い表情だった櫂の顔がどこか照れているかの様に笑ったことにアイチは思わず笑ってしまった。

「そうなんですか、面白いですね」
「こっちにとっちゃ、いい迷惑だが俺も気が早くてな。まぁせっかくだから貰ってくれ」
「はい、ありがたく貰っておきます」

櫂から貰った名刺を大事そうに持ち笑い掛けた。その時――――
ガタンッ!!!
と、盛大な音を立て船が大きく揺れた。倒れそうになったアイチを櫂はすぐに気付き抱きしめた。アイチは一瞬顔を真っ赤にしたが船が大きく揺れたことと嫌な予感がしたアイチは我に返り櫂を押して走り出した。

「おいアイチ!!?」

櫂の声はアイチに聞こえておらずアイチはエミのいる部屋に走った。顔はまさしく顔面蒼白で、部屋の場所は自分の感で向かった。

「エミッ!!」
「ア、アイチ…?」

ベッドの上でうずくまりながらエミはいた。良かった、とアイチはほっと息をついてへりゃりと崩れてしまった。

「今すごく揺れたから…良かった……」
「怖かったけどアイチ来てくれたから私は大丈夫だよ、ありがとう。雨酷くなってきてて、外が全然見えないの…」

船の中でも雨音は聞こえた。まるで船を沈めるかのように打ち付ける雨。

「これ大丈夫だよね…?私達ちゃんと―――」

と、エミが言いかけた途端に警報が鳴り響く。それと同時に船はまた一層大きく揺れ立てる状態ではないほどガタガタと揺れた。

「きゃああぁあ!!!」
「っわあぁ!!」

そして窓ガラスが割れ、水が入ってきた。アイチは怯えるエミの手を引き部屋を出た。しかしいつの間にか水は船内の部屋全てに浸食しておりアイチの腰辺りにまで達しているのだ。

「何なのこれぇ!」
「頑張ってエミ!!きっと今船員さん達が…!」

そう思い水を掻き分けて進んだその時―――。
船は風と浸食してきた水のせいで転覆し、アイチとエミは飲み込まれてしまった。そこからアイチは気を失い視界は真っ暗になった。
















―――こんな所で死んじゃだめ…!君には指名があるんだから……!さぁ目を開けて…そして……生き残るんだ!!

「っほ、が、げほッ!!」

アイチは目を開け、そして吸っていた水を吐き出した。虚ろな目で見るとそこにはエメラルドグリーンの瞳が―――。

「か、…いくん……?」
「ああ…!大丈夫か!?」

そこには櫂がいた。まだ出逢って間もないのだが櫂は心配そうにアイチを見下ろしている。

「ぼく……エ、エミ!?」
「安心しろ、名前は知らないがそいつならまだ寝てる」

ハッと気付き起き上がると隣で寝ているエミを呼んだ。しかし櫂は慌てるアイチをまるで赤ん坊をあやすかのように落ち着かせた。
そしてアイチの目に広がったのは見知らぬ場所だった。目の前には海があり櫂、エミ、アイチは砂浜にいた。雨は止んでいたものの相変わらず雲があり薄暗いまま。

「ここは…?」
「此処は“南の島”などという場所じゃあない。俺達はハメられたんだ」
「え…!?ど、どうゆう意味!?」
「此処は島だ。それも未確認の。だからこの世界にこの島をしる奴らはこの島にいる奴らしかしらない」

櫂は持っていたバックからペットボトルを取り出すとアイチに渡した。どうやら飲め、ということらしい。

「俺達は騙されたんだ。きっとこの島には他にも選ばれた奴らがいる」
「選ばれた……?」
「ああ。俺とアイチ、お前の妹の他にもまだ誰かいる。招待状をみろ」

そう言われてアイチはポケットにいれていたチケットを取り出した。水に濡れていたが破れてはおらず、むしろ綺麗に文字がかかれていた。そこには…

初めましてこんにちは選ばれしアナタ様。そして選ばれしアナタ様には全てを解き富を手に入れ生き残る資格があります。これは偶然ではありません。運命なのです。さぁヨウコソ呪われし島へ

―――どうか…生き残ってこの島の謎と呪いを解いて下さい


アイチはそうチケットにかかれた文字を淡々と読んだ。そして目を疑った。

「何、これ…!?」
「さぁな。俺にもわからない。ただ言えることは一つ、」

櫂のエメラルドグリーンの瞳が揺れた気がした。アイチは思わず声を漏らして震える口を動かした。

「死んでは………いけない…!」

自分が此処に来たのは偶然なんかじゃなかった。そうゆう運命だったのだ。そして―――殺される前に殺さなければいけないのだ。









集マッタ?
アア、集マッタ集マッタ。
選バレシ全テノ駒ガ集マッタ。デハ始メヨウカ。

殺セ殺セ。殺サレル前ニ殺スンダ!!
殺シテ、コノ島ノ呪イヲ解ケ!





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