黒光定
ぬるいR15?


光定さんは優しいですね
そう言って笑う君が僕は嫌いだ。僕の何処をみて、何を知って、優しいなどと君は言えるのだろうか。
初めて逢ったときも、君は僕を信じて疑おうとはしなかった。
手を差し伸べて、笑いかけて、少しだけ優しい言葉をかけただけなのにアイチくん、君は手をとってしまう弱い人なんだよ。だからレンくんにも言われたんじゃないかな?
櫂くんの側にいる資格はない、って。
アイチくん、僕はその通りだと思うよ。だって君はこんなにも弱いんだから。アイチくんは僕を"優しい人"って信じているから、ほんの少し声をかけただけで笑って近寄ってきてくれる。四つん這いになって、床を歩く動物なんかよりも容易く操れる。
なんて滑稽で、惨めで、恥辱的な生き物なんだろうね、…アイチくんは。

「アイチくん、君は本当につまらない人間だね。こうやって、君は溺れることしかできないんだから」

そう言ってみれば、案の定アイチくんは小さな声で悲鳴じみた声をあげた。
レンくんも、欲しがるはずだよ。櫂くんはいいものばかりを持っているね。力もある、ファイトだって強い上で先導アイチという弱くて誰もが欲しがるモノを持っているんだから。
そんなアイチくんだからこそ、隙しかない。例えば、このあと汚しに汚した汚いアイチくんを櫂くんの元に返したら、どんな反応をするのかな?
怒る?見捨てる?汚いと笑う?
後者はあまりなさそうだね。ああ見えて、アイチくんを大事にしてるんだから。そうすると、そこが櫂くんの欠点かな。

「み、つさ、だ、さん、なんで、なんで、」
「どうしたの、アイチくん?ちゃんと言わないとわからないよ?」
「っ、うっ、…ふぇ、」
「君は赤ん坊みたいだね、上手く喋れないし、言葉にすら出来ない、そして、なんでも信じてしまうんだから」

言いすぎたのかな?アイチくんは泣き出してしまった。
でも、結局はさっきからあまり変わんないね。泣いて、鳴いて、喘いでばかりだ。羞恥に耐えながらも、力の入ってない身体は意図も簡単に受け入れてしまうから面白い。
時折、口からは櫂トシキの名前が上がってはごめんなさい、と何故か謝罪の言葉が出ている。なんだかそれが堪らなく、苛立ちを覚えさせて酷くしてやればこの有り様。
アイチくんにも、以外と欲はあったんだね。なんて言ってみれば耳まで赤くして首を左右に振るから、笑いが止まらないかと思ったよ。

「アイチくん、そういえば日に焼けると赤くなる、って言ってたね。だからアイチくんの肌は雪みたいに真っ白だ」
「ひっ、くすぐった、っう!?いた、いたぃい、」

じわり、と口の中には鉄の味が広がった。皮膚を破った犬歯はアイチくんの首元を進み、口内に血を運ぶ。
どうやら本当に痛いみたいで、アイチくんは仰け反り、シーツをつま先で蹴る。吸血鬼ってこうやって、人の血を飲むんだなぁ、なんて考えてみたりしてたら、たいして伸びてない爪でアイチくんは僕の腕に爪を立てた。

「ああ、ごめんねアイチくん?痕、残っちゃった」
「そ、んな、や、やだ、光定さん、なんでこんな酷いこと…!」
「酷いこと?うーん、ごめんね僕にはよくわかんないんだ。…それよりも、さぁ。この痕、櫂くんが見たらどう思うかな?アイチくん、軽蔑されちゃうかもねぇ」
「!」

目にはまた薄い水の膜を張る。
ほら、そうやって何でも信じちゃうからアイチくんはダメなんだよ。少しでも否定すればいいのに。違う、そんなことしない、って。疑えばいいのに。つき飛ばせばいいのに。
アイチくん、君はどうしてそんなにも、順上な犬なんだい?
もしかして君の演技なのかな?だとしたら身体を張った演技だね。演技のために、意図も簡単に身を委ねるなんて、それこそ本当に軽蔑されちゃうんじゃないかい?…まぁ、君にこんな素晴らしい演技が出来るなんて到底、思えないけど。

アイチくん、君が悪いんだよ。
なんでもすぐ信じ込んで勝手なイメージを作る君が。
優しい、なんてそんな善人はこの世にいないんだから。それでも、アイチくんが僕を優しくて、良い人だと思っていたいならどうぞ、ご自由に。
それなら僕は君に応えてあげるよ。いつまでも優しいフリをしてあげよう。
喚いたって、泣いたって、最後は結局溺れてしまう弱いアイチくん。
僕は、"優しいから"、"優しい人で"、いてあげるよ。嬉しいよね、アイチくん。

「大丈夫だよ、君が櫂くんに捨てられても、僕は"優しい"から君を大事に飼ってあげるよ。だから、何も心配はいらないよ?……ねぇ、アイチくん。僕は優しいでしょ?」

首輪は何色がいいかな?
そうだ、せっかくだから今度櫂くんに自慢をしてみようかな。
アイチくんを飼ってみた、って。

触れた肌は冷たくて、白くて雪のようで。でも次に触れてみれば、よく映える赤い紅い花が咲いていた。
アイチくん、覚えておきなよ。人は嘘で固められて出来ている、って。
まぁ、今さら覚えたって遅いだろうけどね。


白雪の肌に印を刻む
130217




お題は瑠璃さまから。



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