幸せになりましょう



レンアイ


「アイチくん僕と結婚しましょう」



いきなり後ろから抱き着かれたかと思えば素っ頓狂なことをレンさんに言われた。思わず持っていた鞄を落とす



「レ…レンさ…ん?」
「こんにちは。アイチくん」



いつものニコニコとした表情だ。いくら人通りが少ないとは言え外で抱き着くのは遠慮して欲しいのだが



「こんにち…じゃなくて、えぇええ!?」
「反応が遅いですね」
「ちょっと頭がついていかなくて…」



今だ後ろから抱き着かれたままの状態でアイチは唸る。いや、まさか。いつもふざけているレンの事だ、きっと冗談で言っているのだろう



「冗談じゃないですよ」



はっきりときっぱりと言われた。この人は人の心が読めるのか、何がどう……



「もう一度言いますよ?僕と結婚しましょう」
「……あの…レンさん…?」
「何ですか?」
「えーっとですね、結婚って普通男の人と女の人がするものじゃあ……」
「そうですが?」



まるでそれが何か?とでも言いたそうな。わかっているなら何故……



「昨日、本を読んだんです。そしたら仲の良い人達は幸せになるために結婚をしたそうです。その先の未来もずっと仲良く幸せに生きていくと誓って」



何処か嬉しそうな口調でレンさんは言った。僕はと言えばどう返事をしたらいいのかわからなくなってしまい俯いた



「僕はもっとアイチくんと仲良くなりたいです。それは、好きだから。アイチくんと一生一緒に楽しく幸せに暮らしたいんです。だから…ね?」



これは本当のプロポーズをされているみたいじゃないか。いや、されているのか?



「指輪、とかはもちろん後でちゃんと用意しますよ。ウェディングドレスはアサカにでも作って貰いましょうか…」
「ウェディング…!?だ、誰が着るんですか!?」
「誰って……。もちろんアイチくんですよ」
「僕は男ですよ!?」
「きっと似合います、ウェディングドレス姿のアイチくん」
「似合わなくていいですよ!」
「まぁとにかく採寸するので来て下さい」
「ちょ、え!?レンさん!?」



ひょい、と何とも軽々しく僕を持ち上げてしまった。担がれたとでも言うのか。暴れたが「暴れたら落ちますよ」とレンさんに言われ、思わず静かにしてしまった。なんて呑気なことを考えてる暇は無い。この状況から抜け出さなければ



「あの、レンさ…!」
「僕と一緒に幸せになって下さい。きっと僕は楽しいですよ」



ふと、悲しそうな表情で言ったレンさんに思わず言葉が詰まる。レンさんなら……



「……考えておきます」



なんて言ったらレンさんに「今すぐ決めて下さい。いいえ拒否権はありません」と言われてしまった。何を言っても抵抗をしても無駄ならしい




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