朽ちた世界の向こう側
櫂→アイ
三和アイ
先導アイチは俺が四年前にとあるカードをあげた相手であった。ぼろぼろで、ぼぅっとしてるやつで汚いな、と声を掛けたのが始まりだった。
アイチは俺が四年前のことなんか覚えてない、と思っているようだが俺はむしろ、アイチよりもはっきりとおぼえている。だからこそ、アイチは俺を尊敬としての感情でしか見ない。
ファイトが強い、ただそれだけの櫂トシキとして。
なら、俺からその強い、をとったらどうなるんだ?……俺は自分でもそんなことを考えたことが無かった。
俺はアイチが、強いやつが好きなのかと思った。目を輝かせて、すごいね、と笑うから…だから俺はアイチに惹かれていった。さらにどんどん、好きになった。
しかし、アイチは違った。
強いだとか、そんなものはどうでも良かったんだ。
「アイチー、このあと駅前に出来たカフェのさ、パフェ食いに行かね?」
「わぁ、行きたい!ちょっと気になってたんだぁ!」
「うっし!じゃあ、決まりな!行こうぜ」
「うんっ」
そう三和が言えば、アイチは三和だけにしか見せない顔をする。
その表情を向けるのは三和。
感情も全て三和。
気付けば、俺の隣ばかりを見ているアイチ。
自分がアイチのことを想っていると気付いたのは遅かった。すでに三和とアイチの仲が深くなって、付き合っていると聞いたときには遅かったんだ。
「っと、鞄とってくるな、」
「はーい」
「…アイチ、」
「櫂くん?どうしたの?あ、そうだ櫂くんもパフェ食べに来ない?」
「俺は――…」
「櫂は、行かねぇよな」
ぽん、と鞄をとりに行っていた三和に肩を叩かれた。
三和の目には威嚇の態度。俺が今までにアイチにしてきたことを根に持ってるのか俺がアイチと絡むことを良く思わないらしい。
「あ、ああ」
「ほら、櫂は忙しいんだよ、だから二人で行こうぜ〜!」
「そうなんだ、…じゃあ櫂くん、また今度行こうね。ばいばい」
「じゃーなぁ、櫂。……また今度なんて絶対ねぇよ」
カードキャピタルはいつもと同じような騒がしさだった。それでも、いつもの日常とは違う。
好きだ、なんて今更言えない。
そもそも俺がアイチと話すことを許さない三和にどうしろと言うのだ。諦めろ、とでも言っているんだろうな三和は。
それでも諦めきれない、俺は本当に馬鹿なんだ。
(なんだか櫂くんが報われない…。三和アイ←櫂が書きたかったんだが、なんか三和くんが微妙に黒く……。
お題は瑠璃さまより)