コバルトロリータ




レオン×幼女アイチ
(手はおひざ続)


ふぁあ、と眠たそうにレオンは欠伸をした。手に持つ学生鞄が邪魔で捨てたい気分だ。しかしさすがにそこまではせず、のどが渇いたという理由で公園のベンチに腰を掛けると先程買った缶のサイダーを開け、喉に通す。そうすればしゅわりとぴりぴりとどちらとも同じような感覚で喉を潤すのだ。そのせいか眠気が吹っ飛んでしまった。いつも「一緒に帰ります!」と言ってきかないシャーリーンとジリアンのチェン姉妹から逃れるようにわざわざ遠回りして帰路しているものだから疲れたのだ。きっとジリアンは血眼になってレオンの影を探しているだろう。
と、じゃりと砂を踏む音が聞こえて音のした方を見れば、まだ幼い顔立ちでコバルトブルーの宝石をそのまま眼に埋め込んだかのような瞳がレオンと合った。ぷっくりとした艶やかな桃色の唇を開くと小さな少女は首をこてん、と傾げながら言った。

「かいおにいちゃん…じゃない…」

どうやら“かい”と言う名の人物を探しているようだ。お兄ちゃん、と言っているところからすればはぐれたのだろうか。年は10にも満たない少女は困ったようにきょろきょろと辺りを見回し始めた。レオンは何も言わず、暫しその少女を見ていたところ足が縺れたのか盛大にどてん!と転んでしまった。青色のさらさらとした髪は揺れ、ついでにスカートもめくれパンツが丸見えになっていた。さすがに放っておけなくなり立ち上がると「おい、」と一言声をかけた。

「大丈夫か、怪我は……どうやらしてないみたいだな」
「ぁ、あ…」
「有名所の学校だな……。誰か探しているのか?」

そう聞けば少女は静かに首を縦に振った。小さな声で「かいおにいちゃん…」と言う。先程も聞いた言葉にレオンは少々唸りながらも詳しく聞くことにした。名を聞けば先導アイチと言う。ついでにアイチの言う“かいおにいちゃん”は実兄ではないらしい。レオンに心開いたのかにぱにぱと笑いかけ、恐怖心はもうないようだった。

「い、いつもはこのこうえんにいるんだけどね、きょうはれおんおにいちゃんがいたから……」
「おにいちゃ……っ、ゴホン、いつもそいつの家に行ってるのか?」
「うん、かいおにいちゃんね、おりょうりすごくじょうずなの!このまえはホットケーキつくってくれたんだよ!」
「ふぅん……」

と、ただふらふらと二人は何処に向かうわけでもなく歩いていた。そもそもあの公園で待っていれば“かい”と言う人物が来たのではないか、と今更ながら考えた。たまたまレオンが先にいただけで、アイチは普通にいれば良かったんだと思ったが今更戻るのもめんどうくさくなった。
だからと言ってアイチを連れ回している自分を思うと誘拐犯になった気分だった。何しろ出逢って間もなく名前しかしらない幼女と歩く自分がいるのだ。そんな趣味はない、と言い聞かせてアイチをみれば好奇心のある瞳をきらきらと輝かせてレオンを見るものだから「う゛っ」と唸るように顔を熱くさせて目をそらした。

「おさんぽたのしいねー」
「散歩?」
「れおんおにいちゃんとおさんぽ!あ、でもでも五時までにはおうちにかえんなきゃだから……」

しゅん、と俯いたかと思うとレオンはぎょっとした。何しろアイチは目からぼろぼろと大粒の涙を流して泣いていたからだ。まるで自分が泣かせたみたいで、近所を通る奥様方は二人をみるとレオンをじろりと睨みヒソヒソと話すものだから必死でアイチを宥める。

「ど、どこか痛いのか!?」
「ぅ、うぇ、ひっく、」
「なっ、泣くな、簡単に泣くものじゃないぞ!」
「れおんおにいちゃんと、ばいばいいやぁあ、ふぇええ、やだぁあ、」

思わずレオンはぎょっとした。泣いていた理由がまさか自分のせいだとは。ましてやお別れをしたくない、と理由で………。しかしアイチはわんわんと泣き、もっと一緒にいたいと言いはじめる。何故だか幼女相手にレオンは耳を真っ赤にさせた。
アイチが、可愛くて仕方ないのだ。

「だったら、また今度逢ったときに遊ぼう、」
「ほ…んと?」
「ああ、本当だ。今日は遅いから家まで送る、だから、な?」
「やくそく、だよ?ぜったいに、ぜったいに遊ぼうね」
「約束する」

途端にアイチはぱぁっと嬉しそうに笑いレオンを見た。そして小指を差し出すと指切りをする。
ここがぼくのお家だよ、と舌足らずな呂律の回らないアイチは指を差して言う。おぶっていたアイチをゆっくりと下ろすと約束だよ、と言って手を振りながらアイチは玄関の扉に手を掛けた。が、何かを思い出したかのようにパタパタとレオンのほうに戻ると手を引きながら少し屈んで、と言うので屈めばちゅ、と音と共に頬に柔らかな感触がする。アイチは小さな桃色の唇に手をあて、「ないしょだよ、これはね、れおんおにいちゃんがやくそくを忘れないおまじない」と言って今度こそ家の中に入っていってしまった。
レオンはとうぶんぼぅっとしたまま、シャーリーンとジリアンがレオンを見つけるまで顔を真っ赤にしながら動けずにいた。


コバルトロリータ
130111




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