此処にいるよ
櫂アイ
はっとアイチは目を開けた。そして震えた。怖い、怖いとばかりに。そしてゆっくりと起き上がった
「っ……」
だがやはり、この静寂した闇の中たった一人でいる恐怖心に襲われまた布団の中に潜った。そして目の前にある広い背中に出来る限り近付いた
「……どうしたアイチ」
と、低い声。目の前で寝ていたはずの櫂が寝返りをうちわざわざアイチの方を向いた。アイチは涙目になった目を隠すように拭った
「な、何でもないよ櫂くん!」
「お前は本当に嘘を付くのが下手くそだな」
「うぅ…」
ぐさり、と微妙に傷付いた。だがやはり櫂にはお見通しだったのかとまた泣きそうになった
「怖い夢でも見たのか」
「……うん…」
頷いた。そう怖い夢。夢ならどれだけ救われるだろうか。正夢になどなって欲しくない
「…四年前にいじめられてた僕を櫂くんが気付いてくれなかった夢……。櫂くん、櫂くん、一人にしないで…!」
怖い。恐い。あの四年前にもし櫂がいなかったら、カードをくれなかったらという夢を見たのだ。今もずっと一人で寂しくて怖くて辛くて
だがそれを否定するかのように櫂はアイチを抱きしめた。目を見開いた
「櫂くん…?」
「そんなはずは無い。俺は此処にいるだろうが。お前もいる」
「うん…、そうだよね、ちゃんといるもんね」
嬉しくて泣いた。櫂はアイチを包み込むかのように抱きしめる。さっきまで恐怖で眠れなかったが櫂がいる、と思った途端に安心したのか眠気が襲った
「か、いくん……。おやすみ…」
また朝が来る。こんな闇を明るく照らし出す光が。またアイチも櫂を確認するかの様に背中に手を回した