気付いて下さい




レンアイ



レンさんはとても不思議な人だ。

少なからず僕はそう思う。
例えば、僕がレンさんに「アイチくんは何が好きですか?」と聞かれて、真っ先に思い付いたのは櫂くんが作ってくれたカレーだった。玉ねぎを使ったカレーなんてびっくりでそれと同時になんて美味しいのだろうか…!という気持ちになった。
それを言葉にしてレンさんに伝えれば途端に眉を潜めて機嫌を悪くしてしまった。
僕が、「どうしたんですか?」と尋ねればますます不機嫌になり「アイチくんはあっちに行って下さい」とAL4の本拠地にいる僕に対して言った。

仕方なく僕は帰ることにしてトボトボと一人夕日の沈む時間を歩いていた。いつもなら嫌というほど、煩いというほどにレンさんは送ってくれたのになんだか寂しくなったてしまう。
そんな事を思っていたら途端に携帯が鳴り出した。
レンさんからだ。



「もしもし?」
『……』
「レン、さん?」
『……だ、…い』
「へ?」
『今すぐに僕のいる所に来て下さい!!!!』



鼓膜が破れるかと思った。
声を張り上げて言うものだから思わず携帯を落としそうになってしまった。
と言うか、僕のいる場所、って物凄くわかりにくい。そう思いながら来た道を戻りまた戻ってきた。



「……えと…レンさん?」
「何ですか」
「ハヤシ…ライス?」
「見ればわかるでしょう」
「いや、そうですが……えっとですね…」
「早く食べて下さい」



眼、が怖い。物凄く怖い。
レンさんにカツアゲされてる気分だ。よくわからないが、戻ってきた早々、アサカさんに椅子に座らされスプーンを持たされた。そしてテツさんがハヤシライスを僕の目の前に置くと、じろりとこっちを見て、「早く機嫌を直してくれ」と申し訳なさそうに言ってきたのだ。

渋々スプーンをお皿に近付けて掬う。そして口に運んだ。



「美味しい…!」
「!」



そのたった一言でレンさんは目をキラキラと輝かせると僕に近付いてきてニコニコと笑い始めた。



「でしょう?そうでしょう!?僕が作ったハヤシライスは!!」
「は、はぁ…」
「櫂が作るカレーなんかよりずぅっと美味しいですよね!!これから毎日、此処に来て下さい、僕が美味しいハヤシライスを食べさせてあげますから!」
「えっ」



いきなり上機嫌になったレンさんに驚きつつ首を傾げた。
やっぱりレンさんは不思議だ、と。






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