6月のひと



闇アイアイ


6月6日は僕の誕生日だった。皆がおめでとうと言ってくれた。カードキャピタルで、櫂くんが、レンさんが。これほど幸せなことはないと思う



「えへへっ…」



あのあと、皆でまたカードキャピタルでやり直すってことになって集まって……本当に楽しかった。皆が祝ってく……



『全員は祝ってないよ』
「!?」



誰かの気配を感じた気がして写真を見ていた手を止めた。途端に懐かしいあの感じ―――PSYクオリアだ――!



「なっ…!?」
『怖がらないでよ、否定しないで僕を――』
「ち、ちが!否定なんかしてないよ!ただ驚いちゃって……だってあの時……」



あの時。レンさんと決勝戦をして僕は全てを受け入れた。悪い自分、弱い自分、情けない自分……人を蔑む僕も全て自分と受け入れてPSYクオリアは確かにあの時―――



『僕はね君と同じアイチなんだよ。容姿、行動、何をするにも僕は僕……。6月6日は僕の誕生日、僕が僕を受け入れてくれた事で僕は眠りにつくことが出来た。だけど6月6日は僕の大事な日……辛い過去も君と僕の思い出なんだよ。ずっと言えなかったけどね―――ありがとうアイチ。僕を受け入れてくれて。本当にありがとう』



いつの間にかそこは真っ暗な場所にいた。上も下もない場所で、空間にいるような。きっともう一人の僕がいる場所なんだろう。真っ暗で何もなくてそれは『無』に近い――



『僕はいつも見ていた、もう一人の僕……君が傷付けられているのに僕は何も出来なくて自分が大嫌いで憎くて。無力な自分が大嫌いだった、僕はこの大切な日にしか眠りから覚めることが出来ない…だからこそ僕は君に会いたかった』



そう言うともう一人の僕は歩み寄って僕を抱きしめた。そうだ、僕は一人なんかじゃない…いつだって君がいてくれたんだ。守ってくれた。一緒に泣いてくれた。だけど僕はその存在に気付かずに一度否定をしてしまった



「ごめんね…ごめん…僕は…君はいつも僕の隣にいてくれたのに…僕は、」
『僕はまた深い眠りにつくけどいつでも僕が助けを呼んだら助けに行く、守るよ、辛いことは君一人だけのじゃない僕のでもある……だから最後に言うね…全てに感謝を込めて…』



もう一人の僕は泣いていた。それと同時に自分にも伝わる涙。本当に君は僕なんだ、こんなにも―――



『お誕生日おめでとう…!』



そこで目が覚めた。辺りを見回すとそこは見慣れた光景……自分の部屋だった。だが夢ではない。確かにいたのだ、自分が―――



「…君もだよ。お誕生日おめでとう。全てに感謝を込めて――――また逢おうね6月に…」



もう二度と否定などしたりしない。今度は一緒に歩むんだ、進むんだ、皆で一緒に――…




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テーマ「人外ファンタジー」
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