雨の日の先導者
コーアイ
※70話定造
ただちょうど見掛けただけ。たまたま雨が降って傘を持っていただけ。もう会えないと思ってたけど見たときはなんていう偶然という驚きとそして…喜びがあった
「……濡れるわよ」
「コーリンさ、ん……?」
タクトのいる建物をじっと見ていた。わかってる。この子が凄く辛い思いをしていることも。だけど話す訳にはいかなかった。せめて元気をつけて、そんな悲しい顔をしないで笑って欲しかった
「会いたかったら勝ちなさい。そうすれば会えるわ」
そう一言言った。そしてカードを渡した。きっと私では“櫂トシキ”の代わりにはなれない事くらい知っている。だけどこの子のいつまでも寂しそうにする表情は辛かった。せめての力になりたかった
「で、でもこれ、凄くレアな…!!」
「別に私があげる、と言ったんだから素直に受け取りなさいよ。あんたは頑張って勝つのよ」
「コーリンさん……。ありがとうございます…!」
にこりと笑った。アイチが笑った途端にさっきまでの土砂降りが嘘だったかのように晴れた。ああ、やっぱり笑っている表情が一番良い。思わず綻んだ。私も少し力になれたのかな、と柄にでも無いことを思ってしまった
「…じゃあね、また会いましょう」
「はいっ!」
傘を閉じた。きっと帰ったらレッカに「またお節介焼いたの?!」と聞かれるに違いないわ。別に私の自由じゃない。櫂トシキには負けたくない、と思い歩き続けた