愛は重いくらいが愛。それを理解するのは重い。気持ちが言葉とは真逆にキラリと光る鋭利な刃のように胸に突き刺さって血液が流れて止まらないまま、まるで息の根も止まるやもしれんというとこまで、すぐそこまで、迫っている。
「お前の部屋、何もないなー」
「それくらいがちょうど」
それにしては無さすぎだ、もっと物欲を持てと順平は言う。お前が有りすぎるんだろうと有里は諭すとあらゆるものへの愛が重いんだと口走る順平を見てまるで、その、胸に突き刺さる刃物が抜けない感覚を思い出しては何かを吐き出して、愛が、伝わらない。もやもやて霧がかかったような脳内は愛情を捨てて暴挙に出たように荒い思考だ。薄くて荒くて雑な、それでも仮にも愛で、混乱症状。
「順平」
「ん、なに――」
「うおっ」ワイシャツの衿をぐっと掴まれて引き寄せられて怯んで、体勢を崩してベッドに倒れた順平の上に有里は被さって、ああ、形見の見物か、と。思い返しても愛情。腐っても愛情。血液が循環する。
「なっ、なに!?」
「愛が重いってやつだよ」
「誰に!!」
「愛すべき馬鹿にかな」
食い入るように順平の顔をまじまじと見ては有里はふっと笑う。
声が聞きたいからいらない耳を取っておいて、左の視界はお前のために開いていて、行き場をなくした両手はお前に譲りたいくらいで、声なんてあってないようなものなのにお前は返答は求めてきて、ああ、順平が言うように愛が重くのし掛かってつらい。
息が苦しく、愛を見返して、記憶は定かではない。反芻しても確かなのは記憶と言うことだけで確かにそれは魔術の幻想なのかオゾン層並の愛なのか。
それを履き違えた時の胸に突き刺さって抜けない刃物も血液が伝って生暖かい感覚を肌で感じた愛をすべてが超越した何かも、すべて順平に押し込んでめでたし。

120411.




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