ペンを持つその指を舐めたいと思ってじっと見ていた。その指を舐めたいと。
窓枠の奥を見て目が眩んでいつからこんなに視力が落ちたろうという程に周りがぼやけて一体全体何もかも人工的で可笑しくて笑ったら彼は急に笑うなんて可笑しいねと指摘して私はなんだか興奮した。
ペンを持つその指を舐めたいと思ってじっと見ていた。その指は規定通り五本あった。
はっとなって我に返ったら既に日が暮れていた。彼はまた可笑しいねと笑うので堪らなくて指をちょん切ってやろうかと思ったが平穏が保たれないことを知っていたのでやめた。堪らない、とても堪らないのだ。その目も唇も鼻も全てが私の五感を文句なしに嗚呼と言わせる。いやだ、何て素敵なの!
ペンを持つその手を握り返したいと思うのは到底私が純粋な愛に目覚めたからです。可笑しいと笑う彼に興奮なぞしませぬ。だって私は類いまれなる処女で無垢で真っ白な少女であり、彼の指を食べてしまいたいなんて思うわけないじゃあないですか。むしろそんなカニバリズムなんて気持悪くって、嗚呼。
「メルヘンだね」
「可笑しいね」
「答じゃないな」
「そっちだって質問じゃなかった」
「それもそうだ」
指が規定通り五本あるのになぜ私の感情はあったいったりこっちいったりにっちもさっちもいかないの。逝きたいのに。あの指で脳みそ掻き回されるのも宜しいかと思われます。


興奮!

120408.



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