喩えばそれは霧と例えばそれは曇天と譬えばそれは無欲な罪を抱えた少女の舞だった。そしてそれは無欲で無頓着で無理強いだった。喩えば誰かに可愛いと思われたり云われたり、例えば誰かに良い人と思われたり感じられたり、譬えば誰かが死んだり寧ろ私に死んでほしいと消えてほしいと願われていたり、そんな些細な日常が私にとっては他になんの優劣のつけようが無いほど素敵な退屈のない日常なのだといつぞやか誰かに吐き出してみれば偏屈に思われ笑われた。例えばそれが彼にとっては偏屈であっても私には幸福なのだと思ったらそれは誰にも塗り替えられぬ私の幸福だと云い張って、有無を云わさずに静かに人を笑うだろう。私はそんな彼を私の例えた日常に組み込む要因はひとつとしてない。それが喩え、霧であっても夢であっても例えであっても私は有り得ないと思った。幸福とは。幸福とは喩えてこその裕福だと感じた。

 例えばそれはゆらゆらした曖昧な表現で。例えばそれは言葉の前に張るバリアーのようなもので。中途半端で偏屈で、すべてを綯い交ぜにしてあやふやにする。

 四股は動かず黙る。口から漏れたものは、言葉か、内容物か。傍らに佇んでいた私を見守るはずのその人は、もうさようなら。



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