眠れない夜がある。覚めない朝がある。喋らない昼がある。見ない夕方がある。わたしはなにもかもになんの変哲も感じず、なんの気分も持ち合わせたくないのです。だってつまり、人と関わりたくないだなんて嘘なんだろう。同じ感覚や趣味の持ち主を見てしまった暁にはそれを獲得したいと思うだろう。わたしは誰かになりたい訳じゃない。誰かを得たい訳じゃない。誰かの作ったものを見てそれになにかを感じて終わりたいだけなのにどうしてこんなにも周りに干渉されるんだろう。

手が震えるんです、人がたくさんいるんです、耐えられないことがあるのは仕方がないではないですか。耐えたってぶっ壊れるだけではないですか。耐えろっていうから耐えたけど耐えきれなくておかしくなったらなんで自分のコントロールもできないんだとか少しは考えろとか言われるのはなんでですか。なんでそんなこと言えるんですか。うざったいからあなたのわたしを見る眼をえぐり出して香りも嗅げないように鼻へし折って喋らせないためにその口切り刻むよ。――うそ、ほんとはそんなこと出来やしないけど、それくらいあんたたちの意味がわからないの。

区分の仕方が間違って、良い悪いの区別がつかないのはあんたたちだよ。なんで八つ当たりみたいなことを言うのですか。
落ちて墜とされて、それが仕方のないことだとしたら、わたしは心外なんです。

よく手が震えるのは怖いんじゃないかと思うのが怖くて震える。
諦めたらダメですか。落ちたらダメですか。髪の色が金ではダメですか。耳にピアスをしてはいけませんか。なにもかもがダメですか。わたし、思うんです、誰かが怖いとか許せないとか、そんな感情が生まれたらもう数年は正常でいられないと思う。もうわたしは正常なんてあり得ない。普通がもし変哲だったらどうしてくれますか。解ってくれますか。わたしを許してくれますか。あなたたちは何を思うんですか。

そんなこと考えているわたしはどこに配属されますか。

ああ、全くわたしは
眠れない夜が欲しい。
覚めない朝も欲しい。

わたしは欲張りで強欲でそれでいて無欲なんです。

110418.




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テーマ「人外ファンタジー」
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