おかあさんがそこにいて
おとうさんはすこし離れてて
おねえちゃんはすぐそこ
いもうともすぐそこにいる

わたしはどこからも遠くて
しかし自ら離れていって
まるで自業自得なのです

母にはふたつ、眼がある
その眼で、わたしを捉えてね
父にはひとつ、鼻がある
その鼻で、わたしを感知してね
姉にはみっつ、口がある
その口で、わたしを楽しませてね
妹にはよっつ、耳がある
その耳で、わたしの声を聞き逃さないで


だって、だってみんなわたしを蔑ろにするんだもん
わたしだって泣きたいのに
わたしだって食べてしまいたいのに
わたしだって楽しみたいのに
わたしだってひとりになりたいのに
その曖昧さを その微塵な感情の起伏を
「おかしい」と 怪訝に見る

わたしは そのわたしを見る母から
生まれたのよ
結局似た者同士なんだもん
おかしいのはどっちなの?
もう いやだよ
こんなにもつまらなくてさみしい
仲良しだなんてよしてよ
だったらわたしを大切にしてよ
もう 会えないんだから
もう 感情がおかしくなったんだから

だから
涙が出る理由なんか知らないよ
なのに泣く声も出ないのも知らないよ
わたしはただみんなが

勝手だな っておもっただけだよ

110331.




第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -