俺のかのじょは言いました。
「ねぇ、甲子園ていいところ?四番なら私を甲子園に連れていってよ、ねぇ」

なんと性悪な、とは思ったものの、俺のかわいいかのじょはいつものさまでそう言ったので、許してあげた、ついでに甲子園に連れていってあげる、と約束した、夏の暑い帰り道。

晴天は、一体全体いつまで続くのだろうか、と思って早一ヶ月。気付けば俺のかわいいかのじょを甲子園に連れていかねばならない時期に差し掛かっていた。だんだんと辛くなる、精神が不安定になってくるのがわかる。
今、メールで俺のかわいいかのじょから「今日田島くんとあそびたい」と来たもんだ、暢気だな、暢気。俺は四番という重荷を背負ってるのに。一応「あそびたいなら放課後九組来て」と返しておいた。こんなことを授業中考えられる余裕がある俺が一番暢気だった。あぁ、つらい。涙が出るよ。


「俺、篠岡のことすきだからね」
「うん、わかってるわかってる」
あぁ、ひどく疲れているのがわかる。だって篠岡が机に顔を突っ伏している俺の指先を掴んでいて、もう午後四時になるのに空がまだ気味の悪いほどに真っ青で、空気は夕方のにおいがして、逆光で篠岡の顔がわからないくらいには空が明るいんだ。
「しのおか」
「…やだ、辛気臭い顔しないでよ」
「俺、死んじゃうかもしんない」
「やめてよ、あそんでくれるんじゃなかったの」
空の明るさが眼を殺した。萎むような眼をしていたら「起きて!」と篠岡が俺に渇を入れた。心は甲子園なんか連れていけねーよと弱気なのに、願い入れする篠岡には笑顔と口からは絶対約束が出た。まるでこの矛盾した空のように、俺は篠岡の指を弄んだ。

110209.




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