目の前は陰掛かった空が見える。私はその空を、夜中で明け方時刻に見ている。西から東へ虹の様に青から赤と濃いから薄まった色の空で終わる。その空は雲が灰色であった。
と言うのは私の只の願望で有る。実際はただ暗い群青色の空が広がっているだけで、私が言いたいのとは全く程遠い。雲だなんて見えなくて悲しい。だから私が目を覚まして居る時位はもう少し見余る様な綺麗さを映して欲しかった。然し乍がら私は心の穴が埋まった感覚に陥った。目の前の光景にはピントを合わせたく無い。調律なんてしたってどうせ同じ空だ。空の色も日の出が近付く度に何だかペンドラーを轢き潰した様な色が只々見たく無い物を見ない様に反射的に視界を曇らせたかの様にもやあっと歪んだ。だから私は見ない。こんな事、きっと夢でも見て居たのでしょう。だって、若しも此れが万一の事で現実ならば、私は寒がりなのにこんなにも寒い夜に短いデニムのズボンなんて穿きはしないし、人が寝ている筈の時間なのに隣に人が居るはず無いし、そもそも、そう、彼が此処に居る筈も無いからもっとその場の薄気味悪さが増して、私はしゃがみこんだ。だってもう何も彼もが歪んで見えるの。
だからきっと、現実主義の私が夢だなんて思うんだ。


「ぐあいでもわるいの?」
あ、話し掛けてきた。
「さむいの?だいじょうぶかい?」
まだ懲りずに話し掛けてきた。
「こんなよなかによくないね。いえにくるかい?ここからはちかいんだ」
なんなの。
「ほらったって。ぼくのうちにいこう、かおいろもよくないし、いますぐにあったまらなきゃあ」


私のすくんだ両肩を彼が支えた、其の時の彼の手が無性に暖かかった。寒さが尋常じゃない中の暖かさでは無かったから、もう可笑しくてそいつを嫌いになった。薄着をした上に、軽くカーディガンを着ただけだった私の服の上からでも、暖かさが伝って来て、厭になった。
でも手が暖かい人は、心が冷めてると何時ぞやかに聞いた事が有る。

「さわんないで!」

私の肩に有った其の人の手が私の怒鳴り声でびくっと動いたのが判った。ふと後ろを見ると、其の人は俯いていた。何と言う落ち込み様。何だか凄く悪い事をした気分にさせられた。
何時迄も何も言わないし、尚且つ私の顔色を伺って掛かるから、見ないでと言ったら、又、少し、びくっとした。
其の人を見てたら寂しいと死ぬ小動物を見てるみたいで死にたく成った。

011202.



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