はじまりはいつも


「ねぇだからどうなってんの、コレ」


「君が静雄をどうにかしたいって言ったからしてあげたんじゃないか。感謝されることはあっても、問い詰められる筋合いはないね。僕はセルティと愛し合うのに忙しいから、じゃ」


ツー、ツー、と電話の向こうから聞こえる音は一方的に切断されたことを示した。
あー、ほんっと最悪。

くそ、絶対手まわして痛い目にあわせてやる。

「臨也、好きなんだ。ごめんほんとどうしていいか…」

自分より図10センチ以上体のでかい男にもじもじされたって気味が悪いだけだ。
ましてや今まで殺し合いをしてきた世界で一番憎んでいた相手なのに。


「シズちゃん、あのさ…さっきまで俺のこと殺そうと追い回してたワケ。わかる?」
「ほんの数時間前にポストやらバイクやら自販機やらゴミ箱やら投げつけたくせに。
それを何年間続けてたと思ってるの。
今更『ツンデレでしたー』じゃ済まされない訳だよ。
どんだけのツンだよ。
そもそも俺は人間が好きなのであってシズちゃんみたいな怪物は論外なんだよ」


もう何が何だかわからないくらい一気にまくしたてた。話し終わった後にはぜいぜいとなるくらい、一気に言い放った。


「いや、そうだった。でもずっと俺の中ではほんと特別な存在でさ…それが何か今わかった。付き合ってくれ」


「ちょ、ちょ、ちょっとまって!とにかくここはまずいからこっち!」

池袋のメインストリートからは外れて、路地に入っているとは言え…こんな大声で叫ばれたら誰かにバレてしまう。

急に捨てられた子犬のように。そんな目でみないで!
こんな目立つ池袋の喧嘩人形が、敵対してる俺を押し付けて愛を囁いてるなんて。

冗談じゃない冗談じゃない!



とにかく波江に事務所からは出るように、重要な取引があるからこちらから電話するまでは決して入らぬようにとの連絡を入れた。
まだ後ろでごちゃごちゃ言ってるシズちゃんを引っ張ってタクシーに乗り込み、事務所へと急いだ。


こんなことは望んでなかった。
ただ、池袋に来る度にシズちゃんに絡まれるのをどうにかして欲しいそう言っただけなのに。
ホレ薬ってどういうことなんだよ!

新羅め…心の中で舌打ちしつつ、シズちゃんの方へ睨みつけた。


「どうした?具合が悪いのか?」

「ああ胸糞悪いよ…」
こんなシズちゃん、気持ち悪すぎる。

毎日殺し合いのおいかけっこをして、本気で憎んでいたじゃないか。

本当に厄日だ。
これから1ヶ月、悪夢がはじまる。






100423 更新
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