※アイドルオタ静雄→アイドル甘楽ちゃん(♂)の謎パラレル。キャラ崩壊ってレベルじゃないです。





だから俺はめんどくさいっつったんだよ。
アイドルなんて興味ねーんだよ
オタクなんて気持ち悪い…





そういう時期が、俺にもありました。


平和島静雄から学ぶヲタ芸講座


キラキラと輝く舞台の上に立つ、細くて可憐な脚。
抱きしめたら折れそうなくらい薄い腰。
膨らみはないものの、絶対にみせられることのない胸。
同性とは思えない中性的な顔立ち。

どこをとっても完璧。
最近地下アイドルとして人気を博している甘楽ちゃんだった。

時たま見せるどこかもの悲しげな切れ長の瞳はたった一目で俺のハートを射抜き、いつの間にか最前列でサイリウムを振り回しながら甘楽ちゃんを応援することが生き甲斐となってしまっている。

「みんなー!元気にしてたー?」

「「「はーい!」」」

「でもねー、イザイザ星は今残暑が厳しくてー、甘楽ちゃんは夏バテ気味なんだよぉ。この前なんかぁ…」

せっかくの甘楽ちゃんのMC中にべちゃくちゃ喋る野郎を背後に感じて、崩れた顔をドスの利かせた睨みに代えて振り返る。

「手前が話していい場所じゃねーんだよ。ここは甘楽ちゃんを全身で感じる場所だ」
そいつらは「ヒッ」と小さく声を上げてすぐに口を閉じた。

それでいい。甘楽ちゃんの可愛らしい声がゲスな男共にかき消されて聞こえなくなるのは耐え難い。

「と、言うわけで!いつものあの曲聞いてくださーい!『あれれ★おかしいな〜!』です!」


即座に腰に回されたサイリウムホルダーから取り出し、折るように刺激を与えれば眩しいくらいピンク色に輝いた。

「それじゃあいくよー!」
甘楽ちゃんのかけ声と共に同胞達と共に円陣を組んで姿勢を低くする。
「「「甘楽!甘楽!甘楽!甘楽!甘楽!甘楽!甘楽ー!!」」

拳を高く突き上げるとすぐさま持ち場へと散っていく。

甘楽ちゃんのライブではピンク色のサイリウムを使うことが決まりとなっているから、小さなライブハウスは一面ピンクの光に包まれている。
甘楽ちゃんが楽しそうにぴょこぴょこと跳ねればステージをトランポリンに変える。
甘楽ちゃんはそんな力をもっているのだ。

曲がサビにさしかかった。緩やかになったといっても未だ光っているサイリウムをサイリウムホルダーへ押し込み、まだ使用していないサイリウムを八本取り出す。
指と指の間へ差し込んでそのまま床に叩き付けると二本でも眩しいくらいに明るかったそれがその四倍の明るさで輝いて甘楽ちゃんを照らす。

甘楽ちゃん、俺の雄志みてくれ…!
必死に体をそらしロマンスを捧げる。
すると甘楽ちゃんは俺の方を向いてニコリと笑った。

ああもう死んでもいい。

甘楽ちゃん、愛してる。




「おー静雄お疲れ」

「あ、お疲れ様っす」


この世界に入り込むことになったのは中学の先輩のトムさんだった。
トムさんが気に入っているアイドルがいるから、と連れて行かれたあの日から毎回一緒にライブへ行っている。
トムさんが気に入っているのは甘楽ちゃんではなく、ファンをめちゃくちゃにいたぶることで有名なアイドルだった。
インディーズレーベルが同じらしく二人とも同じイベントに出ることが多いのだ。


「出待ち組今回もすげーなー」

「…そっすね」

甘楽ちゃんを待っているらしく、先ほど後ろでMCの邪魔をした奴もいた。
手紙や差し入れをしない訳ではないがあまりに過激な出待ちや入り待ちは甘楽ちゃんにとって苦痛になるかもしれない。

「あっ甘楽ちゃん!」
「甘楽ちゃーん!これ!もらってよこれ!」
「ありがとうございますー!」
「これも!」
「えっと、ありがとう…っわ、押さないで!」


ちょうど出てきた甘楽ちゃんに数人のファンが取り囲み、甘楽ちゃんの天使のような笑みにも困ったような要素が含まれている。
…俺が助けないと!

「おい、静雄!」

「大丈夫っス。すぐ戻るんで」

荷物をその場に下ろすと、甘楽ちゃんを囲む野郎の首根っこを掴んで放り投げる。
数人をひっ掴んだ所で甘楽ちゃんがステージから向けたあの笑みで俺を見た。

「ありがと!」

「…いや、あの当然のことだし」

「それじゃあまた応援よろしくね!」

見間違えじゃなければ、駆けていく最中俺に向かってウインクをしたんじゃないだろうか。



やっぱり俺、今日死んでもいい。















「あーもしもし?ドタチン?」

「ライブはいつも通りだよ」

「みんな『甘楽ちゃーん』とか呼んじゃって本当に滑稽だよね」

「もう笑っちゃうよね!全く!」

「…それはいいから早くテレビの仕事持ってきてよ」

「キモヲタ共の相手なんかもう飽きちゃったんだからさ」







100831 更新

正直すまんかった。
懲りずに同じ設定のエロも書いてます…。
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