※酷しずお×似非ビッチいざや。


知りたくなかった




まさか、だった。

俺を触ったシズちゃんの手は慣れていて、すごく上手かった。
肌をなぞる手も、乳首を甘噛みするその舌使いも。

それでも、経験豊富な振りで誘ったのは俺。
したくて仕方ないから抱いて、とすがりついたのに。

本当は体だけでも繋がりたかった。
それだけだった。

「ビッチが。ここがいいのかよ」

「う、ぅあ…」

太い指でしこりを摘むように擦られる。
それでもあらぬところに指が入っている異物感は決してかわらなかった。
痛みのなかに混じる快感にできるだけ意識を集中させても、冷や汗は勝手に吹き出る。
必死でシーツを握りしめる俺を純情ぶりやがって、と吐き捨てた。

「ん、…は、そっちの方がソソるでしょ?」

上手く笑えたかはわからない。もしかしたら震えていたかもしれない。
本当は男女経験すら、まともにないなんてそんなこと言えなかった。

シズちゃんの表情も伺う余裕なんてもうない。


「チッ…もう待ってらんねぇな…入れんぞ」
取り出したそのペニスは凶悪というのに相応しい形をしていて、どう見ても未経験の綺麗な色とは言えなかった。
コンドームの袋の端を歯で破くそれも、ペニスにつけるその手つきも馴れたもので胸の奥がちくちくと傷んだ。

どうにか息を吐ききって体の力を抜こうとしてもこわばって勝手に力が入ってしまう。

下肢に冷たい液体が降ってきて、強く瞑っていた目をうっすらと開ければシズちゃんがローションを垂らしている様が見て取れた。
なんだか生々しい行為にカッと赤くなる頬を隠そうと腕で顔を覆った。

「カマトトぶってんなよ…!」

「ぅ…ぐぁ、!」

直接は見ていなかったが、相当な大きさだったペニスの先端が今まで吐き出すためだけの役割しか持たなかったそこへ割って入った。
痛い、真っ二つに裂ける!

大丈夫、大丈夫と自分に暗示をかけてもどうしても痛みがそれを上回って気が遠くなりそうだ。

「きっついな…動けねーだろ。力抜け」

「ぁは、ごめ、んね…っシズちゃんのがあまりにおっき、から…」


涙もポロポロと零れているだろうし、汗は尋常じゃないほど吹き出している。
無理して笑うことだってうまくできない。

「…お前本当は経験ねーんだろ?こんだけキツけりゃわかんだよ」

「そんなこと、あるわけ…んひぃっ!」

一気にその熱の塊が突き刺した。
痛い痛い痛い!

この痛みがシズちゃんであると思うとその痛みさえ愛おしい、そう体に思わせることでほんの少しだけ痛みが和らいだ。

おかしいな俺ってマゾの気はなかったはずなんだけど…。

ズッズッと中の肉を引っ掻くように抜き差しが始まると何かに捕まってなくてはいられなくて必死でシズちゃんの背中へと爪を立てる。
ぼんやりとした頭の中で小さく舌打ちがきこえて腕を解かれた。
代わりに枕を与えられて必死に掻き抱いた。

そうだ。俺達は抱きしめあうような関係じゃない。

目の端に涙が滲んだけどそれはきっとこの裂けるような痛みの所為だと自分に言い聞かせて必死に力を抜く。
はふはふとうまくできない呼吸を繰り返して自分にのしかかる金色を見る。
それが動くたびにずきん、ずきんと痛む。
「ぅ、あ…あ、あ……!」

「色気ねー声だな…」

萎えきった俺のペニスを掴んで勃たせながら今まで以上に激しく突く。
限界が近いんだろう。尻に当たる音が大きく、はやくなる。

奥を抉られるように突かれ、息を詰めるとゴム越しにも伝わる程に射精をした。
イけなかった俺のペニスを乱暴に扱いて俺も自分の腹の上を濡らした。

「…ぁッ」

ズルリと中からぺニスが抜け出る感覚は排泄に似ていて鳥肌が立つ。
ぽっかりと穴が広がったままの気がしていたが、指で確かめることは怖くてできない。


「…つまり、ヤりまくってる振りしてでも俺に抱かれたかったわけだよなぁ?」

「…べつに」

鼻で笑ったように吐き捨て、萎えたペニスからローションと体液でぐしょぐしょに濡れているコンドームを外す。
それにも躊躇する様は全くなく、つい唇を噛み締める。


「ほしいもん、やるよ。目閉じろ」

「え?何言ってんのやめてよ。今更同情だなんて吐き気がする」

「俺がやるっつってんだから有り難く受け取れ」

さっさと目を閉じろ、とまごまごする俺にイラついたらしく眉間の皺が深く刻まれた。
仕方なくゆっくりと閉じる。

唇が重ねられることを予想して小さく息をのむ。
心がこもっていようがなかろうが、シズちゃんからのキスなのだから、胸の鼓動がうるさいのも仕方ない、と勝手に理由をつける。


ドロリ、


その期待を大きく裏切り、まさかの感触が降ってきた。

生臭くネトついた感触が非対応のあたりから鼻筋、口元を流れて顎からポタリと垂れた。
目を空けようとしても瞼や睫にも付いたらしくそれは叶わない。

先程射精したゴムをびっくり返したのだろう。俺にだってそのくらいは察することができる。

「精液、欲しかったんだろ。手前にはそれがお似合いだ」



吐き捨てるような台詞と共に扉が閉まる音が聞こえた。
拭うこともできず、白濁まみれの顔で俺は何もできなかった。

精液とは違うそれが頬を伝うのは目に入って痛かったから。

たったそれだけの理由。




100825 更新
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