《静雄side》
まさか、こんなことになるなんて予想できただろうか。
今の俺は全裸にタオル一枚の状態でホテルにいる。いままでで一度もない経験だ。
上司であるトムさんに誘われ、酔った勢いでイメクラ?だかに入った。
正直風俗なんてもんも初めて、それどころか女性経験は一回もない。
トムさんには『筆おろししてもらえ』と親指を突き出してウインクまでされてしまった。
お前にはこの子がいい、なんて適当に言われて言われるままにホテルに入ったのだ。
酔っ払ったトムさんはちょっと強引だからなあ…
そんな俺はホテルに入ったところで急に酒が冷めてしまった。
さっきまで酔っ払って気が強かったからどうとでもなると思っていたのだが、現実が急に振ってきた。
とはいえここまで来てしまったら、やるしかねぇ。
甘楽、と言ったか。最初は恐がらせてしまったようだが、顔はきれいな顔をしていた。
石鹸でぬるぬるとさわられた手もすごく心地よかった。
それを思い出してまた頬がカッと熱くなる。
こんなことになるなら、恥を忍んで買っておいた女性誌のセックス特集でも読んでおくんだったと悔やまれた。
いちいち恥ずかしくなって読むのをためらって埃を被っている雑誌を思い浮かべてため息を吐く。
あいつが着替えをしてる間、何をしていたらいいのだろう。そもそもどのくらいの時間がかかるんだ?
とりあえず下半身は臨戦態勢のままだが無理やりまた下着に押し込んだ。きついが仕方ない。
服ももう一度着るべきなのだろうか…。
いやどうせまた脱ぐのだから、と思考を巡らせながらタバコをくわえた。
緊張しているせいか何度火をつけようとしても点かない。
「チッ…んだよ」
舌打ちを打って煙草をテーブルに捨てた。
「おまたせしましたー」
「お、おま、おまえ…!」
言葉に詰まるに決まっている。奴はチェックのスカート、赤いリボン、セーター、ワイシャツ、紺色のハイソックスをまとって出てきた。
「え?似合わないデスかー?」
「いや、あの、お前」
目の前でくるり、と一回転して首を傾げる姿は本当に可憐で、とても似合っているのだが…
「お前高校生だったのか…?」
「え?…そんなに似合う?」
吃驚している自分とは相反してクスクスと笑われた。
いや、じゃあなんでそんな格好してるんだ。確かに似合うとは思うが。
制服なんて着てあるくのなんて学生だけだろう。
「えっと、ここ学園イメクラだからね?」
「おう…」
「先生と生徒って設定でプレイするの。わかる?」
「…?」
頭にはクエスチョンマークだらけだが、とりあえずそういう店なのだと理解するしかない。
それにしてもよく似合っている。
「そっちじゃなくて、こっちきて。センセ」
ベッドの上の布団を捲り上げて腰掛けた甘楽は手招きする。やけに短いスカートから覗く白い足が艶めかしい。
誘われるままにベッドに入る。いや、でもこれからどうするんだ。
脱がすのか?キスが先なのか?
焦っては怖がらせるだけだと聞いたことがあるような気がする。
焦らないようにするにはどうするんだ。しゃべって緊張をほぐすのか?
喋るにもなにを話せばいい…。
「ね、こっちむいて」
「…あ」
思考をぐるぐると巡らせていると向こうから腕を引かれた。
目を閉じた甘楽の顔が近づいて、慌てて俺も目を閉じる。
しっとりとした感触が自分の唇に当たった。
これが、キスなのか…
「!?」
とたんにぬるりとした感触に目を開いた。
歯列を割って引っ込んでた舌を吸われる。
にゅるにゅるとした生暖かい感触に腰へ甘い刺激が走った。
負けじと無我夢中で舌を動かしたがこれで正解なのかはわからない。
「ぷは…先生って意外と積極的…」
「うっせぇ…」
唇を離してその間に銀色の糸を引いて、プツンと切れた。
唾液で濡れた甘楽の唇は赤味が増して更に色っぽい。
→
100602 更新