※シズイザ前提ドタイザ。イザビッチ



さようなら、俺の恋



放課後の誰もいない教室、アイツの誘い文句、乱れた制服、響く喘ぎ声。
すべてがまるでいつか見たAVのようだった。


「ねぇ、気持ちいい?」

「…あぁ」

ぎゅぅ、と内部を締め付けられて眉間に皺が寄った。

「ふふ、俺も。ドタチンのっておっきいよね」

そう言って笑う臨也はまるで娼婦のようだった。

臨也の中は気持ちいい。
ズブズブと俺のを飲み込む癖に、抜こうとするとペニスを離すまいと蠢く。
女性経験は多い方ではないが、そこそこはある。
しかし男性経験は今までになく、こんなにいいものだとは思ってもみなかった。
まるでペニスを飲み込むためにあるかのように蠢いている。

だがそれは俺以外の男をソコに受け入れているという証拠に他ならない。


「あ!そこ、すっごい、いい…!もっとそこぉ!」

「ここ、か?」

「んぁ…そこぉ…イッちゃうよぉ…」

舌っ足らずで甘ったれたようにねだる声も男を誘う術のうちの一つだろう。

それでも俺はコイツが、折原臨也が好きだった。

臨也からの誘いがかかったとき口から心臓が飛び出そうなくらい驚いた。
気がついたら精一杯それを隠して承諾していた。

望みがあるんじゃないかと、心のどこかで思っていたんだ。


「俺も、出そうだ…っ」

「一緒に、イこ?」

快楽に濡れた笑みを俺に向けて、抜けないように腰に脚を巻きつけた。
中に出せ、ってことか。

できるだけ臨也のイイといったポイントに当てながらスパートをかけるように腰を動かす。
内部は今まで以上に俺を締め付け、玉に熱がこみ上げてきた。

「く、あ、ああ…!」

「あああ!イく、イくよ…シ、ずちゃ…」

その声に目を見開いた。
その相手はお前が世界一嫌ってる相手じゃないのか。
なんでその名前を呼ぶんだよ。
なぁ、なんで、


目の前にいるのは、

抱いているのは、

俺なのに。






「あは、ドタチン出しすぎじゃない?」

「お前のは随分薄いんだな」

臨也の精液は量が少ないながらも自らの腹を汚している。
ぎりぎりのところで制服には付かなかったのが幸いだ。
ポケットからハンカチを出して拭き取ってやっていると臨也は笑った。

「そんなこと、シズちゃんはしなかったなぁー」

ズキリ、

「シズちゃんは抜かずの二発とか当たり前だからさ」

ズキリ、

「へぇ…そう、なのか」

胸が痛む。苦しい。

できるだけ変に反応しないように、引き抜いたところから漏れる精子を簡単に拭き取る。

頭の中に霧がかかったようだ。
思考がうまく働かない。


「聞いた話なんだけどさー」


身支度を整えながら臨也はやはり笑ったままだ。

「男は自分を好きじゃない相手とのセックスって気持ちよくないんだって」


「でもドタチンは気持ちよかったんだよね?」


「ドタチンのセックスもそこそこよかったんだよねー」


「結局噂は噂かー」


無邪気に笑うな。

俺は、


お前が、


すき、なのに。

それでも臨也はペラペラと話していた。静雄とのセックスのこと、それを楽しそうに。


ぐわんぐわんと世界が回る。ゆっくりと臨也の声が遠のいていく。
それでも無意識に俺は愛想笑いをして、適当に相槌を打っていた。


それ以上聞きたくない、と脳が拒否反応を示している。

「ね、ドタチン」

名前を呼ばれた。ああしっかり聞いてやらないと。
重い腰を上げて薄っぺらな鞄を肩に担いだ。

「精子、中に入れたままシズちゃんに会ったら、嫉妬してくれるかな」



夕陽に照らされた臨也の顔は、俺が見たことないくらいにうっとりとしていた。




臨也を見送ったあと、俺は声をあげて泣いた。
そんな声も蝉の声がかき消してくれる。



高校二年の夏、俺の恋が終わった。




100529 更新
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -