イケメンが悪い
合い鍵を取り出すと機嫌よくドアをあけた。
両手にはスーパーの袋。そこから飛び出すネギが主婦の象徴のようで少し吹き出す。
だって俺ってば通い妻じゃん!
鼻歌まじりヤニ臭い部屋に踏み入れた。
「しーずーちゃんっ!」
ふとベッドに目をやると金色の頭がはみ出している。
寝息に合わせて盛り上がった布団が規則正しく上下した。
全く、俺に来いって呼び出しをしたくせに寝るとはどういうことだ。
とはいえ、今日の朝まで仕事だったということもきいている。疲れてるとしても気配で気づいてくれるとかないのか。
ないか。
シズちゃんがそんな器用なことをできるはずがない。
妙に片付いた台所にスーパーの袋を置いてため息を吐いた。
最近シズちゃんの仕事が忙しい。池袋に遊びに行ったとしてに仕事中では周りに付き合っているなんてバレるわけにもいかないから路地裏での抱擁もままならない。
久しぶりの逢瀬だと楽しみにしていたのは俺だけだったのかと少しだけ寂しくなる。
無邪気に寝息を立てる顔も整っていてむかつく。
かっこいい。むかつく。
あまりにもかっこよすぎて俺をドキドキせるもんだからデコピンをくらわせてやった。
思いっきり眉間に皺がよった。
ざまあ。
俺をぼっちにさせやがって。ばか
「ん、なんだ手前か…」
「なんだじゃない、よ!ばか」
寝ぼけたまま何をどうして良いかわからないといった表情だった。
というか俺がなんで怒ってるのかすらわかってない。
む、頬を膨れさせる。わかれよ、あほ。
「なに膨れてやがんだ。その歳じゃ無理があんぞ」
「俺21だしー」
「あ?ばかじゃねーの」
唐突に腕をひっぱられる。力任せに引っ張られてシズちゃんの上に倒れてしまった。
久しぶりの、シズちゃんの匂いだ。
少々強めに抱きしめられて胸がいっぱいになった。
なんで俺泣きそうなの。
俺そんなキャラじゃないはずなんだけど。
涙腺が壊れたみたいにぶわっとこみ上げる。
目を閉じたら涙が溢れそうで、まばたきをしないように必死に開けた。
「なに泣いてんだよ」
「泣いて、ない」
「あ、そ」
口は冷たいのに、優しい手つきで髪の毛をいじられてこらえてた涙が頬を伝う。
そんなの見られたくなくて誤魔化すように顔を埋めた。
「悪かった、な」
「…へ?」
「呼び出したのに寝ちまってよ」
いまいち何を言っているのかわからなくてぽかんと口を開けて見上げた。
数秒して言葉の意味を理解すると今度は我慢できないくらいの涙がボロボロあふれた。
ばかじゃん、ばかじゃん、ばかじゃん
涙腺はとっくに崩壊していたらしい。
天然でこんなこと言えるのかこのイケメンは。
もうアホかと。バカかと。
「さみし、かった」
「…おぅ」
ボロボロ零れるせいでうまく言葉を紡げない。
胸板に顔を擦り付けてそこで涙を吹いてやるんだから。
それでもシズちゃんは怒らないでおさまるまで髪を撫でた。
なんでこんなことで泣いてるのかもわかんないけど、それも全部イケメンのせいだ。
リクエストありがとうございました!甘甘とのリクエストだったのでゲロ甘にしてやる!と思った結果がこれですp(´⌒`q)リテイクはお受けします…!
100528 更新