※媚薬。


はやく潤して



足りない。


足りないのだ。


シズちゃんとお付き合いをして4ヶ月。
初めてのお突き合いから2ヶ月。

そりゃあ初めは純情童貞なシズちゃんに合わせてゆっくりゆっくりしてきた。
三回目のデートでキスという最近の高校生でさえ爆笑間違いなしのマニュアルさえもこなした。
雰囲気を作り、いままでしてこなかったコンドームでさえ、律儀にきっちりつけてリードさせるようなセックス。

よくここまで耐えたと思う。


俺としたことが、やさしくて下手くそで慣れてない愛撫に感じてしまったけれど。
シズちゃんが入りきったときに感動でうっかり涙なんて流してしまったけれど。


でも物足りない。


毎回壊れ物を扱うようにさわられて、優しすぎて、もっと壊してほしいのに。
シズちゃんのことしか考えられないバカになっちゃうくらいに乱暴にされたいのに。

だから今日は、


ちょっとした役作りにコイツを使わせてもらうことにする。

瓶に入ったオレンジ色の、まるで子供用のシロップ薬のようなそれを一口含んだ。
甘過ぎて喉に残る感じまでしっかりシロップ薬と変わらなかった。


「高かったんだから、しっかり気持ちよくしてよね…」


ふふん、と音符でもつきそうなくらいだ。
ふたを閉めて残りはポケットへ忍ばせた。
待ってろよシズちゃん…。







池袋に来るまでに体はすっかり熱くなった。
ぼーっとするというか、集中することが容易でなくなった。
一口でこんなに効き目があるなんて聞いてない…。

歩くだけでも意識が下半身にいきそうになるのを必死にこらえてシズちゃんの家へむかった。
顔は多分真っ赤だ。

大丈夫、もうすぐ。我慢したほうがもっと気持ちよくなる。
そう自分に言い聞かせて合い鍵をつかった。
少し手が震えてうまく鍵穴に入らないのに舌打ちして中に入る。

「あ…おい、顔赤いぞ」

「あは、ただいま」

鍵穴と格闘していた音で気がついたらしく、シズちゃんはドアを開けばすぐそこにいた。
心臓がやけにどきどきとうるさい。
シズちゃんがいることに安堵し、体の力も抜けてしまった。
はやく、はやく、

心配そうにしてくれるところ悪いけど、もうだめだ。靴を脱ぐ余裕すらもない。
ポケットからビンを出してそれを口に含みそのまま体重をかけてシズちゃんを押し倒し口づけた。

「ん…!?」

とっさのことだったせいかシズちゃんは抵抗もろくにしないままコクリと飲み干す。
それでも舌で口内を蹂躙しつづける。
舌を吸って、甘く噛んで、絡ませる。
きもちいい。

さらに熱を孕んだいまの状態ではこれだけで達せそうなくらいだ。

「ん、は…」

「なに、のませた」

「そんなのいいから、もうさわって」

名残惜しくも唇を離すと間に銀色の糸がひいた。
シズちゃんの頬も赤みがかって目も少し潤んでいる。さすが速効性の媚薬。

まだ履いたままだった靴を適当に脱いで手を高く脈を打っている胸にもっていった。
いつものVネックの下に手を入れさせると自分の体との温度差に息を飲む。

「なにして…」

「気持ちよくなる薬、だよ。ぁ…俺も飲んでる、からぁ、おあいこでしょ?」

シズちゃんの手を、期待で小さく主張している乳首に擦れるように動かす。
チリリとした刺激のせいで甘い吐息が口から漏れた。

「もっとして、もっとシズちゃんにさわってほしいの」

「…ッ」

寝たままのシズちゃんの上半身を起こさせると媚びるように下から見上げる。
ごくり、と唾を飲む音が聞こえた。

いつもの情事中の戸惑ったりするシズちゃんの目ではない、肉食獣が捕食をするような目だった。

「壊れたりしないから、好きに扱っていいから」

「しらねェぞ…」

頷く代わりに鎖骨に噛みつき、喉仏まで舌を伝わせる。
これからの期待に口角がつり上がった。



おねがい、はやく、はやく



多分続きます…

100519 更新
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