※DVシズちゃん。暴力表現あり、性表現なし

繰り返し、繰り返し



「シズちゃ、いたい…」

「お前が、悪いんだよ…!」

ガツン、という音がぴったりだった。
シズちゃんの拳が頬に当たる。

痛いとうよりすごく熱い。
呼吸を擦る度にヒリヒリという痛みが広がる。その痛みの逃がし方はいつまでたってもうまくできない。

口の中で鉄の味が広がり、ペッと唾を吐き出せば唾液は真っ赤に染まっていた。


顔に二発、腹に一発、俺を動けなくするにはシズちゃんの腕力ではそれだけで充分すぎるくらいだった。

「もう、むりだよ…シズちゃん…」


脳震盪を起こしたのだろうか、目の前がぶれるというか真っ白に染まっていった。
前のめりになってうまく立てない。
タバコの匂いが俺を包んだ。

「臨也、いざ、や…いざ…」

薄れていく記憶の中、きっとシズちゃんに抱きかかえられているんだろうな、と思った。



俺たちの関係は、恋人だ。
愛し合っている。
でも普通のそれとは違うかもしれない。

同性であるとか、決して周りに漏らしてはいけないということは別にしてでもだ。


シズちゃんは俺を殴る。
気に入らないことがあるとか、そういうことではない。
どういう意図なのかはわからない、ただ不安になると俺を殴ってくるのだ。

あの腕力でDVなんて俺だから耐えられるんだよ、わかってるのかなシズちゃんは。


「ん…、あれ…」

「臨也!」

目をさますとタバコの匂いが鼻を掠めた。
いまいちよくわからないけどここはシズちゃんの部屋らしい。
目は見えているけど思考回路がうまく働いてくれない。

「臨也…よかった…無事で…」

いや、無事に見える? と言ってやりたいのに、シズちゃんがあまりにもきつく抱きしめるから。
自分で殴ったくせに、俺が倒れるとどれだけのことをしたのかやっと理解して毎回泣きついてくる。
まるで殴っているときとは別人のように。

「シズちゃん、駄目だよ。俺、こわれちゃう」

「ごめん、ごめんな、ほんとにごめん」

シズちゃんやっぱりまた泣いてる。
なだめるように傷んだ髪を撫でてやった。まるで大型犬だ。
その動作すら痛みに顔が歪みそうになるけど、シズちゃんがまた泣いてしまうので笑顔を作った。

「だめだよ、俺だから耐えられるんだからね」

ぐしゃぐしゃの顔で何度もキスを落とされる。綺麗な顔が台無しだよシズちゃん。

「もう、しないからな。もう絶対しないからな」


シズちゃんの涙で唇がしょっぱい。
割れた唇にもしみる。


もうしない、と聞いたのは何度目だろう。

うん、そうしてね。

とシズちゃんに言ったのは何度目だろう。

それでもシズちゃんから離れられない俺はなんて滑稽なんだろう。


こんなシズちゃんを愛してあげられるのは俺だけなんだから。

わかってね、シズちゃん。


ああやっぱりまた、繰り返される。



100512 更新
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