今日は風が強い。道路の端に生えてる木々もザワついている。


宿敵のサイタマに再び挑むため一番高い建物の屋上から街中を見下ろしてピカピカ眩しいハゲ頭を探すが、ハゲ違いだったり風船だったりカラス避けのCDだったりでなかなか見つからない。

改めてわかったのは町にはサイタマに似てピカピカ光るものが溢れているということだ。どうでもいい。



ん…あれは…
なまえ!


歩道を歩いているその姿に一瞬で目を奪われる。
スカートからのぞく足と風に揺れる美しい髪にため息が出る。
町にどれだけ光って目立つ物があってもお前には適わないだろう。
まさか今日こんな時に姿を見ることができるとは思わなかった。


充分になまえを堪能したところでサイタマ捜索を再開する。
信号待ちするなまえを見届けたそのとき、なまえのそばを見覚えある男が横切った。


あ!あれはサイタマ!?間違いない…あのひょうひょうとしたマヌケ面…!
というか毛糸の帽子だと…どうりでハゲ頭を探しても見つからないはずだ…
だが俺の観察力は欺けなかったようだな。今すぐ決着をつけてやる!



サイタマを追うため向かいの建物に飛び移ろうと足に力を入れた瞬間、今までと比べ物にならないくらい強い風が吹いた。


ほんの一瞬。
視界の端に、信号待ちしているなまえが乱れる髪を押さえる姿が見えた。それと同時に舞い上がったスカートの中も一瞬見えた。


「………!」


ほんの一瞬。
ほんの一瞬気を取られて屋上の縁に躓いた結果。










「ん?」

凄い音がしたけどごみ箱でも倒れたか?風強いもんなぁ。
それにしてもこんなに寒くなるとは思わなかった。ジェノスがくれた帽子がなかったら凍えてたな。奴の手編みってのが気になるけど、帰ったら礼を言わないとな。




「?」

凄い音がしたけど何だろう。それにしても今すれ違った人毛糸の帽子似合ってたなぁ。私もソニックに何か編んでみようかな。何が似合うかな、手袋とか?やっぱマフラー?




それぞれの思いを胸に、帰路。







「もー、また窓から入って…ってどうしたのその怪我!!」

頭に包帯巻いて、あちこち擦り傷だらけ。


「誰にやられたの!?」
「いや…」
「なんでそんな怪我したの…?」
「…………」



言えるわけがない。
うまい言い訳も思い浮かばず、おろおろしているなまえと気まずい沈黙が続く。テレビの気象情報から明日の天気が流れていた。


「あっ明日も風強いってー。最近多いね」
「明日はズボンはけ」
「え?なんで?」
「いいから」







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