『忍者』という生業をしていると、不本意な出来事にも多々遭遇する。
例えば緊急で呼び出された先での依頼が『固い瓶の蓋を開けてほしい』という内容であったり。




「貴様…俺をなんだと思っている」
「なんでもやってくれる忍者ですか?」
「そうだ。暗殺から用心棒まで請け負う最強の忍者、音速のソニックに向かってこの依頼は何だ?」
「ふふふっ 用心棒がいるほどの危機なんてそんなに頻繁に陥らないですよ」




なぜ俺がおかしい事を言ったような空気になっている!
こんなアホ女と軽々しく契約をした俺が馬鹿だった。これ以上は付き合いきれん。




「こんな依頼は俺じゃなくてもできる。帰…」
「すごく固いんですよ。きっとソニックさんにしか開けられないです」
「………」



窓から出て行こうとした時聞こえた言葉に振り返ると、エプロン姿で笑うなまえの姿に一瞬怒りを忘れて釘付けになった。

ただ布切れを体に一枚多く掛けているだけで、なぜこうも印象が変わるのか。
料理中に俺を緊急で呼び出したのか。しかしこんな依頼で毎回呼び出されるわけには。




「ソニックさん…?やっぱり駄目でしょうか?」
「…チッ、瓶をよこせ。離れていろ」



仕方ない。今回だけはその依頼を請けてやろう。
溜め息混じりに愛刀に手をかけた。






スパッ





「わっ斬れました!刀で瓶をスパッと…ってソニックさん!?」
「案ずるな。破片は一つたりとも混入していない」
「そうじゃなくて!これじゃあ瓶の蓋を閉めれないじゃないですかー!」
「? すごく固くて開かないと言っていただろう」
「だから、ソニックさんなら蓋をクルッと回して開けれると思ったんですよ!」



この女…くだらない依頼で呼び出していざ遂行してやればギャアギャアと!



「これじゃあ長く保存ができません!」
「騒ぐな。ならば俺が食うのを手伝えば問題ない」
「え それって」



いや待て、これではまるで俺が毎日なまえの飯を食べにくるかのような意味合いに!



「今のは違…」
「じゃあこれからは腕によりをかけて作らないとですね」
「は?」



それでいいのか?
この条件でお前の利益は何だ?
理解できない展開に困惑するも、上機嫌で台所に向かいなおしたなまえの後ろ姿を見ているとどうでもよくなってくる。


明日も修行の合間に顔を出してやろう。
この出来事は、不本意ではないかもしれない。





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