「なまえ!?」
「でもあの人傘さしてるぞ。ほら。」
「ほんとですね。別人でしょうか」
「なまえ…お前なぜ傘を…」
膝から崩れ落ちてうなだれる。
「なまえのようです」
「あれだろ。会社に折りたたみ傘常備してたとかだろ」
「ありますね。折りたたみ傘」
折りたたみ傘…そんな伏兵があるとは全く予想していなかった…
これで俺のなまえに傘を届けてやるという計画は水の泡だ…
突然サイタマの手が伸びてきて俺の横にある二本の傘を抜き取っていく。
「貴様何をす…「おーい!そこのねーちゃん!こいつ傘が無くて足止めくらってんだ。入れてやってくれ!」
「!?」
なんだと
「え…私?あっソニック!?」
傘の影から愛らしい顔が覗く。間違いなくなまえだ。俺に気付いて驚いている。
「ほれ、ジェノス、この傘使って帰るぞ」
「はい」
傘を広げてさっさと歩き出してる二人の背中をみつめる。
「サイタマ…貴様…」
「傘は駄賃に貰っとくぜ」
あんなに腹立たしい奴なのに今回は借りを作ってしまったようだ。
立ち去るサイタマ達と反対方向から駆けてくるなまえと向き合う。
「ソニック。いまの人お友達?」
「違う」
「違うんだ!? 傘ないの?」
「あぁ。だから、その、お前の傘に、い…入れてくれ!」
「丁度良かったー!会社に折りたたみ傘いっぱい放置しちゃってて何個か持って帰ってきた所なの!一個貸してあげる!」
え
ずこー!!!
背後からも盛大な音が…
俺達の動揺には全く気付かず、なまえは肩にかけてる鞄をおろす。中には色とりどりの傘がゴッソリと入っている、なぜこんなに持っているんだ。折りたたみ傘は生きてく上でそんなに大量に必要なのか。
(おいおいおい俺のせっかくの機転が…)
(先生…ここからの軌道修正は…)
「はい。使っていいよ」
「…………あぁ。助かる」
不可能です。
「折りたたみ傘ってあんなに持ってる物なんですかね?」
「世の中いろんな奴がいるからなぁ」
振り返ったらどよんと死にそうな顔をしたソニックとニコニコしている女がいて、非常にシュールな光景だった。
こうなった以上俺たちに出来ることは無い。
「お迎えは成功したみたいですし、良かったんじゃないですか」
「あれは成功なのか?」
今度あいつに傘を返そう。そう心の中で思った。
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