「ソ…ソニック。その、今日はやめたほうがいいと思うよ」
「何を言っている。俺は今日この手でサイタマを倒す」
「じゃあ私服で行くのはどうかな。今より涼しいかもよ」
「戦闘服じゃないと目立つだろう」
「?」


ダメだ、妙に会話が噛み合わない。猛暑にその黒い戦闘服のほうが目立つじゃん、という言葉はぐっと飲み込む。



点けっぱなしにしたテレビのニュースからは、今年の最高気温を記録したとか、熱中症で搬送された人の数が去年より多いとか、物騒な話が淡々と読み上げられている。

さすがに今日の気温は鍛え上げられた忍者にも牙をむいていると思います。
今だってお互いにすごい汗。


この押し問答をしてるだけで干からびそう。とくにソニックなんてその暑苦しい服で余計につらそう。




「ねぇ日にちずらさない?今日はほんとに危ないよー」
「駄目だ。俺はこの日のために最高のコンディションを整えてきた」


天気は計算に入れてなかったの?


「わかった。じゃあせめてこれを持って行って」
「何だこの袋は?」



【タオル 日傘 凍らせたペットボトル 日焼け止め】 


「行楽じゃないんだぞ!もう行く!」


袋を私に投げ返して窓から飛び降りようとするから、慌てて腕を掴んで引き止める。


「だから今日はやめなって…熱っ!」 
「!?」


「戦闘服の金属部分、太陽の光ですごい熱くなってるよ!?」
「なまえっ大丈夫か」
「ちょっ 近付かないで」
「!!!」


衝撃的な顔して固まってるけど、今その服危ないじゃない。その肩の部分とかとくに。


あぁ…ジェノス君の腕とか凄い事になってそう。
ソニックが行ったらジェノス君とケンカになって、仲裁に入ったサイタマさんが火傷しそうだ。迷惑行為じゃない。やっぱりコイツを行かせちゃダメだ。


「ねぇソニック… あれ?」


いつの間にか私服に着替えたソニックが立っている。
ニンニンTと普通のズボン。…そのTシャツもどうかと思うけど。


「その指、俺のせいで悪かったな」
「気にしなくていいよ」
「この服なら近付けるだろ。見せてみろ」
「えー大丈夫だよ」


手を取られてまじまじと指先を見られる。
さっきまであんなバカなことで騒いでたのに、突然どうしたの。


「いつまで見てるの。もういいでしょ」
「確かに大丈夫そうだな。だが念のため冷やしておけ」
「わかった」
「よし」


私の用意した袋を持って窓に向かう。
こんなに暑いのに結局行くんだ。その私服で。


「行ってくる」
「はいはい。がんばってね」


本当にサイタマさんを倒しちゃうんだろうか。
またたんこぶ作って帰ってきたりして。
とりあえずこんなに暑い日は素麺でも湯がいて帰りを待つことにした。




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