「あー涼しいー」


扇風機の前でダラダラ過ごす暑い日の午後。


部屋の外では灼熱の太陽がギラギラと照りつけています。ついこの間まで春の陽気を喜んでいたのが嘘みたい。


あまりの暑さに耐えきれなくなって、ついに押し入れから扇風機を引っ張り出してしまいました。
半年ぶりに見る懐かしい機械。冬の間休んでいたぶん、今日からガッツリ稼働してもらいます。


もう一度チラリと窓の外を見ると、空気がもやもやと揺れているのがわかった。
ものすごく暑い証拠じゃない。
今日は絶対扇風機の前から動かないって決意した、のに。



「どけブス」
「!?」


聞き慣れた声と同時に体を強く押しのけられて風の外に追いやられる。暑っ。私から一番涼しい場所を奪った奴は悪びれもせずに隣にドカッと腰をおろしてきた。
顔を見なくてもわかる。こんな事をするのはソニックしかいない。


こいつは一体いつ家に入ってきたの。それより今ブスって言った?
一瞬で起こった数々の酷い出来事にわなわなと震えている私にはお構いなしに、ふーっと一息ついて風に目を細めている。



「ちょっと、なにするのよ」
「あ?」


面倒くさそうな視線だけをこちらに向けられる。ムカつく。


「あ、じゃなくて!いきなり家に入ってきて何扇風機の前を占領してるの!?私に風があたらないじゃない!」
「………………」
「何か言いなさいよ」
「フッ」



鼻で笑って扇風機の風を浴び続けてる。何なのコイツ。
風で優雅になびく前髪と少し汗ばんだ首筋に一瞬ドキリとしたけど、すぐに気を持ち直す。
このままじゃ暑くて倒れちゃう。その扇風機は私の物だし。こうなったら実力で取り返そう。


「どいてよ」


わりと本気でソニックの肩を押すけどビクともしない。扇風機の前に居座られてる。

ソニックを退かせないなら、扇風機自体を私のほうに向けてやる。そっと扇風機の首に手を伸ばしたら隣から「あ」と何か思い出したような声が聞こえた。


「どうしたの」
「忘れてた。土産だ」


ほっぺにぐりぐりと冷たいものを押し付けられる。


「ひゃっいきなり何するのよ!あっアイスだ!食べていいの?」
「好きにしろ」
「おぉー」


アイスがお土産。ソニックにしては随分気が利くじゃない。


「しょーがないわねー!扇風機の件はこれで手を打ちますか!」
「早く食え。溶けるぞ」
「あんたが早く出さないからもう溶けてるよ」



扇風機とアイスを満喫しながら二人で過ごす暑い日の午後。







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