プリズナーさんとソニックさんの写真を撮ることを約束したけどどうしよう。
『撮らせてください』
『駄目だ』
ってなるに決まってる。
そもそも携帯カメラの使い方がいまいちわからない。
ソニックさんとの待ち合わせまで少し時間があるし、まずは練習で何か撮ろう。例えば、ここからの景色とか。
カメラ機能を起動させて、景色が画面に収まるようにしっかり構える。…シャッターボタンはどれだろう。
カシャ
「あれ?」
私はまだどこのボタンも押してないのに。今のシャッター音はなんだろう。
不思議に思って振り返ったら半笑いのソニックさんが携帯を構えて立っていた。
「え…今…撮りました?」
「お前のアホ面が撮れたぞ」
ソニックさんがこっちに向けた画面には、携帯を構えてる私の横顔がしっかり切り取られていた。
これは恥ずかしい。
「やっやめてください」
「おっと」
携帯を奪おうとしたけど簡単によけられる。頑張って手を伸ばすけど、私が届かない高い位置に腕を上げてニヤニヤ画面を眺めてるから最悪だ。
「ダメっ消してください」
「断る。それよりなぜ携帯で遊んでいた」
「それはソニックさんを撮ろうと…あ」
「ほう?」
言っちゃった。
「でもカメラ機能の使い方がよくわからないから練習していたんです」
「くだらんな。撮れるものなら撮ってみろ。無理だと思うが」
「えっ 撮らせてくれないんですか?私は撮られたのに」
「それより練習とやらはいいのか?」
「そうでした」
また景色に画面を向ける。
カシャ
「ハハハ!またいいアホ面が撮れたぞ」
「もー!また!やめてください!!」
仕返しに私もカメラを向けるけどソニックさんが動き回るから全然撮れなくて。気がついたら夕陽が眩しくなっていて、結局私だけがイタズラに撮られて終わってしまった。
「俺を撮るのはもういいのか?」
「いいです…諦めます。そのかわりソニックさんが撮った私の写真も消して下さいね」
「あぁ、あれか。気が向いたらな」
「もう…」
二人長い影を並べて帰路に就く。
後日、プリズナーさんに結果を報告したら「また次のチャンスがあるさ」とコーヒーショップで甘いコーヒーをご馳走してくれた。
ソニックさんはたまに携帯画面を眺めてフッと笑っているから、きっと私の写真は消されずに残ってるのだろう。
こんな悔しいままでは終われないから、いつか再戦することを誓って携帯電話を握りしめた。
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