なまえの帰りを待っていた。だが時計の針がどれだけ傾いても玄関のドアが開く様子はない。



部屋のソファーに横たわり目を閉じる。



ただなまえの顔が見たくなっただけだ。それだけの事に、なぜこんなに苦戦しなければならないのか。



いっそなまえを探しに行ってしまおうか。もたもた道を歩かなくても、俺が抱えてやればすぐ家に着く。

なまえの足に合わせてのんびり歩くのもいいかもしれない。白い息をはきながら、楽しそうにたわいもない話をするなまえを眺めて歩くのも悪くない。





暖かい部屋で夢心地になってきた頃、玄関のドアが鈍い音を立てた。なまえが帰ってきたか。ソファーの上で目を瞑ったままでいると、靴が脱ぎ捨てられる音が聞こえた。


外の湿った匂いを纏わせてなまえが部屋に入ってくる。すぐに俺の存在に気付いたようだ。






「ソニック…今日も来てたの?」


あぁ。ずっと待ってた。


「待ってた?」


待ちくたびれた。


「寝てるの?」


…………


「ごめんね」






頬に触れられた。冷たい指が愛おしくて、心地良い。


謝る必要なんかないのに。今日もこうしてなまえを感じれたのだから、それでいい。




ふと悪い事を思いついた。

無防備に俺に近付いているなまえの腕を掴んで、このまま抱き寄せたらどんな反応をするだろうか。
少なくとも寝たふりしていた事は怒られそうだ。きっと面白い事になる。




口元が緩みそうになるのを抑えながら、あともう少し近付いてくるのを待ち構えた。




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