あぁ道に迷った。ここは一体どこだろう?
見渡せども崩れかけた廃墟ばかりで心細くなってくる。偶然人が通りかかったりしないだろうか。そしたら道を聞けるのに。人が…あっ
「ん?お前…」
「ハゲマントさん!」
「!!?」
「ソニックさんがヒーローだって言ってたから調べたんです。協会のホームページに載ってました。ヒーローはヒーローネームで呼ぶのが普通なんですよね」
「その呼び方はやめろ」
「でも」
「やめろっ!サイタマでいいから!サイタマ!」
「ハイ…」
こんな所で会うなんて思わなかった。ソニックさんには近づかないように言われてるけど、悪い人じゃなさそうだし、何より道が聞きたい。
「なまえはこんな所で何してたんだ?」
「特売のスーパーを探してたんですけど、道に迷ってしまって」
「この辺にスーパーはないぞ。すげぇ迷い方だな。忍者としてそれでいいのか?」
「…よくソニックさんにも怒られます」
サイタマさんが歩き出したから私も後ろから付いていく。
「サイタマさん、この辺に住んでるんですか?」
「あぁ。もうすぐそこだ」
お買い物の帰りのようで、手から下げたビニール袋にお野菜がいっぱい。美味しそう。私は特売のスーパーを探して一日中さまよっていたから、朝からちゃんとした物を食べていないのです。お腹すいた。
「今日鍋なんだ。お前も食ってくか?」
「えっ突然お家におじゃまするのは…」
「いいよ。既にジェノスが上がり込んでるし。一人増えたところで変わらねーよ」
「それじゃあ少しだけ」
「おかえりなさい先生!ハッ その女性は!?」
「こんばんは…」
「迷子忍者。鍋食ってくから」
迷子忍者…
「迷子忍者を保護するとはさすが先生です」
保護…
私って一体。
「どうした?早く中入れよ」
小綺麗な部屋。お弟子さんが鍋の準備をしている間、座布団に正座してキョロキョロと部屋の中を見回していたら、あまり見るなとサイタマさんに頭を小突かれた。
「出来ました」
「わぁっ美味しそう!」
「なまえ何が食べたい?」
「お豆腐」
あっ 天井に人の気配が。この感じは…
気が付いた時には既にその人は横にいて、もの凄い速さで私の座布団を引き抜いてきた。
予想外すぎる攻撃にバランスを崩したところで、さらにゲンコツされた。これも予想外。
「パ…ソニック!」
「貴様!先生の部屋に何しに来た!」
「黙れガラクタ!
サイタマ…一度ならず二度までもなまえにちょっかいを出したな…」
「いやそんなつもりじゃ」
「サイタマさんは道に迷った私を助けてくれて」
「なまえも!サイタマには近付くなと言ったはずだ!なのになぜ敵地でくつろいでる!?」
ああ…ややこしい事になってしまった。ソニックさんはどうして私がここにいる事に気付いたんだろう。
「せっかく来たんだからお前も食ってけよ、ソニック」
「なっ先生!駄目です!」
「フン。俺はお前らと馴れ合うつもりはない。今日はなまえを回収しにきただけだ。帰るぞ」
ヒョイッと体を抱えられて、サイタマさん達に挨拶する隙もなくそのまま窓から飛び降りられた。
「お豆腐…」
「黙れ」
けっこう親しげだったな。俺がいない間に何かあったのか。どんな会話をしたのか。なまえはサイタマの事をどう思っているのだろう。
そんな事誰にも聞けるはずがなく、モヤモヤした心中で家へと向かった。
「鍋の具が一人分余ってしまいました」
「じゃあキング呼ぶか?あっなまえの靴玄関に置きっぱなしだ」
「あの男やはりアホか」
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