どちらから誘ったわけでもなく、夜の町に出た。
ビルや民家の屋根の上を通り、車や街灯の明かりを見下ろしながら風を切って駆ける。


「ソニックさん、下、すごく綺麗」


隣に並んで眼下の夜景に見とれているなまえがまた躓いて転ばないか不安だが、その時は必ず受け止めると決めている。楽しそうにしているならそれでいい。


戦いで自分の強さを実感するのもいいが、こう意味もなくただ身軽に空中を駆け抜けるのも悪くはない。




「すごい…あの建物あんなにカラフルに光らせてる」

くだらん事だが、ここから見ると見応えはあるな。

「夜なのに人も車もあんなにいるんですね」

あの人混みを上から見下ろせるのは気分がいい。

「あの看板、あれはなんのお店ですか?」

ホテル…!
「…お前は知らなくていい」
 







電波塔に着地し、二人並んで景色を一望する。



「忍者の修行はツラかったけど、この景色を見ると、忍者でよかったって思います」
「…………」



お前は忍者としてまだまだだと言いかけた時、月明かりに照らされたなまえの横顔に声が出なくなる。

まっすぐ町明かりを見つめる瞳に胸が高鳴って、白い息を吐く柔らかそうな唇に目を奪われて、これ以上見つめていたら何かに捕らえられて戻れなくなりそうな気がした。それが恐ろしいのか不安なのかわからないけれど町明かりに視線を移す。


忍者の修行か。なまえは辛かったと言ったが、俺はどうだっただろう。


なまえのほうに視線を戻すと思いっ切り目が合って驚いた。


「!!」
「あ…」
「なんだ?」


なまえには喋るわけでもなくジッと見つめられる事が多い。そのたびに気持ちだけが焦ってどうしたらいいのか分からなくなる。


「ごめんなさい、その、綺麗で…」


綺麗って、俺が?


俯いたなまえを見てるとこっちまで恥ずかしくなってきた。



もう既にこの女に捕われているのかもしれない。
このまま身を任せてしまおうか。









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