町が賑わっている。建物を彩る赤や桃色の華やかな飾りなんて鬱陶しいだけだ。バレンタインだか何だか知らないが、俺はそんな物にうつつは抜かさない。打倒サイタマに向けて今日も修行するだけだ。



「ソニックさん遅くなってごめんなさい」
「なまえ、何をしていた…
っ!その手に持っているのは…」



まさか…なまえからの…



「あっ、これソニックさんに」



チョコレートだと?こんなくだらんイベントになまえまで便乗しているとは。それでも忍か?まぁ、どうしても俺に受け取ってほしいというのなら、せっかくの気持ちだ。受け取ってやらんこともないがな。




「プリズナーさんから」
「いらんわ!!!」
「えっ どうして…」



くっ!!初めから期待などしていない!バレンタインなど…こんなイベント!



「さっきそこで会って、ソニックさんにわたすよう頼まれたんです」
「いらん」
「そう言わずに。ラッピングもこんなに可愛いですよ。少しだけ開けてみましょう?」
「いらん」



なまえが困った顔をしている。俺がチョコを受け取ればいいのか?いや、今回ばかりはもう知らん。このアホ忍者め。謝れ。




「大体奴は男だろう。なぜ男がチョコを配っている?誰からも貰えないから気でも狂ったのか?」
「大丈夫です。かわりに私のチョコをあげました」
「おい」



待て、それはおかしいだろう。なぜお前のチョコがプリズナーの手に。何の目的で作ったチョコなんだ。



「ほんとはソニックさんと一緒に食べようと思ったんですけど、プリズナーさんにもお礼をしたほうがいいと思って」
「なぜ当初の目的を見失った」
「『どうしても俺に受け取ってほしいというのなら、せっかくの気持ちだ。受け取ってやらんこともないがな』って言ってました」



聞き覚えのあるセリフだがあいつが言ったと思うとなんか腹立つ…なぜあんな奴がなまえのチョコを…



大きな溜め息をつきながらその場にしゃがみこむ。
最初から期待なんかしていない。なまえなど…なまえなど…



「プリズナーさんのチョコもきっと美味しいですよ」
「そういう問題じゃない」





ここで騒いでいてもなまえのチョコは入手不可能か。いつまでも頭を抱えていたって仕方ない。
諦めて立ち上がる。


「余ったチョコレート、朝食べなければ良かったです。そしたらソニックさんの分もきっと」
「なまえ」



チュッ



「俺はこっちでいい」
「こっちって…え…」




みるみる赤くなっていく顔が面白い。あぁ、こいつのせいで俺まで何だか恥ずかしくなってきた。顔を見られないように慌てて背を向ける。


「そそそソニックさん今の」
「し…知らん。修行を始めるぞ」
「無理です…」




空気が一気に熱を帯びる。奴からのチョコレートも溶けてしまうんじゃないかと、一瞬本気で考えた。






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