「ソニックさん待って」
「遅い!」


建物や木々の上を縫うように移動している帰り道。
自ら俺に稽古をつけて欲しいと懇願してきた所は認めてやろう。だが音速の俺に比べてなまえが遅すぎる。修行の後でバテているとはいえ、こいつのスピードに合わせて帰るのは…




「きゃあ」 
「!?」



後ろから間抜けな声が聞こえて振り返ると、なまえが木の枝に足を引っ掛けたのかバランスを崩して落ち掛けていた。

咄嗟に抱えに行こうとするも距離がありすぎて間に合わず。バキバキと小枝を折ながら落下する音が鮮明に聞こえた。



「なまえっ大丈夫か… っ!!?」
「いたた…生きてますー」




生きてる。あぁそれは良かった。確かに良かったがそれよりその姿…!


落ちる時に木の枝に引っ掛けたのだろう。服が破れていて肌やら下着やら、見る気がなくても視界に入る。擦り傷だらけで尻餅をついている状況より、どうしてもそちらを気にしてしまうから情けない。



「どうかしましたか?あっ…」
「いや、その、見てはいない」
「…ごめんなさい」



顔を逸らしても先程見た光景が頭をチラつく。あんな姿のなまえが今目の前にいるのだ。なまえ自身も自分の状態に気付き頬を染めている。
とにかくなまえの格好をどうにかせねば帰るどころではない。



「とりあえずこれを着ろ」
「いいです」




着ていたTシャツを脱いで差し出すと断られ…


「なぜだ!?」
「いいです」
「いいから着ろ!」
「私大丈夫です。このままで」
「そんな姿で帰るつもりか!?大丈夫な訳ないだろう!」


そんな姿でウロウロされては俺が大丈夫ではない。なぜいつもオドオドしているのに今回に限ってそんなに強情なんだ?なぜ俺のTシャツが着れない?








(よりによってニンニンT…私には着こなせない…)


「なまえ、今はこうするしかないだろう。この俺が貸してやると言ってるんだ」
「気持ちは…嬉しいです…」


(かと言ってこのまま帰るわけにも。けどニンニンTを私が?私があれを着るの?あのTシャツを?)


「血が付いてしまいます」
「そんな事言ってる場合か?」


(やっぱりご厚意を受けるべき?でもこの歳でニンニンTはキツイです…!)










結局。断りきれませんでした。









「あ…ありがとうございます」
「………」


Tシャツを貸したはいいが、少し小柄ななまえに大きめのTシャツ。
ギリギリ見えるか見えないかの胸と太もものライン。逆にさっきよりこの姿のほうが…


着てしまった。着心地がけっこう良いのがなんだか悲しい


「か…帰るか」
「ハイ…」


お互いに、内心穏やかではないまま、帰路へ。





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