吐溜 | ナノ

大戦SS 3

SS武吉×R口羽 現パロ?

 飲みに誘われた。
 まではよかったのだ、と口羽通良は今になっても思う。
 二人きりだと誤解していたわけではない。それは誓って言える。だが地元漁師の飲み会に投入されるとは予想していなかった。
「騒がしいですね……」
 特有の熱気は通良の肌にあわず、静かに酒を飲んでいる村上武吉の方へ寄らざるを得ない。
 武吉はふっと笑って通良を見下ろした。
「ああ、そういやお前さん、酒は呑める年齢だったか」
「僕を何歳だと思っているのです? とっくに成人は果たしています」
「そりゃあ悪い。あんまし可愛らしい見た目してるもんでな、つい分からなくなっちまうんだ」
「褒めているおつもりですか?」
 眼鏡越しに武吉を睨み上げる通良だが、武吉は笑い飛ばすばかりだ。
「頭領、そいつが前に言ってた奴ですか?」
 ほろ酔いの若者が喋りかけてくる。どんな紹介をされているのか、と通良は眉を顰めた。すると周りも興味を示し始め、
「なんか犯罪臭い」
「誘拐とかじゃないですよね?」
 わらわらと集まってきては好き勝手なことを言う。武吉は怒るどころか笑いを堪えきれない様子だった。
「坊っちゃん、こっちこい」
 観衆の前で通良をさらに近くへ招く。通良は怪訝そうな顔をしながらも武吉の腕が届く範囲まで近寄った。
 太い指が通良の眼鏡を攫い、顎を引き寄せる。突然のことに通良が慌てる暇もなく、カサついた唇が通良に触れた。
「……えっ、あ?」
 呆然とする通良に眼鏡がかけられる。
「こういう仲だ、まあよろしく頼む」
 武吉は既に通良ではなく同僚たちの方を見ている。
「な……にを勝手なこと……!」
 真っ赤な顔で詰め寄る通良に、武吉は笑顔で酒を差し出した。

2013/12/30


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