9話(1/3)

「わり、待ったか?」


その声に顔を上げる。私に声をかけてきたのは彼氏(はーと)とかではなくて隣の家に住んでいる幼馴染のサボだった。息を切らしながら駆け寄ってくるサボに「大丈夫」と言った。

何故私とサボが2人でいるかというと、それは私にもよく分からない。授業中、暇だったからサボとメールをしてたら学校終わったら飯食いに行くかという話になった。そんなこんなで久しぶりに放課後にサボとご飯を食べに行くことになった。


「何か食べたいものあるか?」
「いや特に何もないけど。サボは?」
「おれハンバーガー食いてェんだけど…」
「じゃあマック行こうか」


そう言うとぱあと目を輝かせて満々の笑みで頷くサボに私はふふ、と口角が上がった。早く行こうと言わんばかりに歩き出すサボに遅れないようついていった。







「えーと、ダブルチーズバーガーのMセットで…んー、ドリンクはコーラで」
「あ、私プチパンケーキとポテト…あっ、いやこのクーポン!お願いします。ドリンクはMでファンタお願いします」


頼んだものを持って席に座るなりバクバクと食べ始めるサボを見ながら私もぽり、とポテトを食べる。あ、ケチャップもらい忘れたな。


「最近どうだ?」
「んーまあ普通かな。そっちは?」
「おー、まあおれもだな」
「…ねえ言いたいことあるんだけど、」
「何だ?」
「すっっごいケチャップこぼれてるよ」
「んな?! もっと早く言えって!」


むしろこぼれていたことに気が付かなかったのかといいたいくらいトレーの上にケチャップがこぼれている。あと服にぼたぼた付いてる。染みになりそうこれ。パンケーキを食べながらわたわたしているサボを見ているとじとりと睨まれた。その瞬間にポテトを鼻の穴に突っ込まれそうになってサボの手をバシッと叩く。


「バカ!バカ!! 何しようとしてんの! バカ!」
「ケチャップ! 染み! バカ!」
「どっちがバカだバカ! ちょっと鼻に塩付いたじゃん!」


バカバカバカバカと言い合いを続けてはあと一息。最終的には私のパンケーキあげるから許してと言えばにっこりと笑顔を浮かべて許してくれた。というか私が許してもらうってかとてもおかしいような気がするけど!私のパンケーキ奪われちゃったけど!


「これチョコソースとかあったらいいのにな」
「なんだっけあれ、お絵かきパンケーキ?だったらチョコあるんだけどね」
「ほお? お絵かきパンケーキね」
「まあサボ絵心無いし無理だね! チョコかけるだけになるわ」
「失礼だなお前…」


ニヤリと笑ってそう言えば眉を下げながら口を尖らせるサボ。やった!ちょっぴり仕返しできた〜とニコニコしてたらサボが「ん、」と言ってパンケーキを差し出してきた。

ん?これ、あーんってことか?目をぱちくりさせてサボの顔を凝視すると早く!とでも言いたそうにフォークを突き出してきた。しぶしぶ食べるとにんまりと笑うサボ。ああパンケーキ冷めちゃってる!


「よー、2人で何やってんだ」


冷めきったパンケーキを頬張ってるとガタンと音を立ててサボの隣に腰をかけた。その人物に私は驚きパンケーキを喉に詰まらせてしまう。
当の本人は何食わぬ顔で私のポテトを勝手に食べ始める。私は目の前で何が起こっているのか分からなくて喉に詰まったパンケーキをファンタで流し込んだ。


「おおエース、何だお前こんな時間に?」
「いや特に。今日はさっさと帰りたかった気分でよ」
「へー、珍しいこともあるもんだな」
「うっせ! …つーかアネモネ、お前大丈夫かさっきから」
「っぐ、え! は〜…! ……え、え、エース!なんっ、な、な!なんで!!」
「ゲ、何だよポテトもう冷めてるじゃねェか。ケチャップは?貰ってねェの?」


突然のエースの登場に頭がついていかないというのに!コイツは人のポテトをボリボリ食っては不味いだのどうのこうの言うし!(あれ、不味いとまでは言ってないか)私の向かいに座るエースに心臓がバクバクと跳ねる。顔が熱くて仕方ない。

私が今どれだけ気持ちに余裕が無いかをエースに教えてやりたいくらい!それなのにへらりと笑うし、ポテトは食べるし、人の飲み物は飲むし。ああ関節キッスじゃないかもう!バカ!どうしようもなくてサボの方をチラリと見ると困ったように笑っていた。ああ、私を救ってくれる気はないのねあなた!


「…で、2人で何やってんだよ」
「何って…見ての通りデート?」
「ブッ! ちょっ、サボ?!」
「……ほう?」
「待って待って待ってエース、ちが! ねえサボ変なこと言わないでよ」


サボは頬杖を付きながらエースの方を見てニコニコ笑っている。それをエースはじとりと睨みつけるように見ていて、ああどうしてこうサボは変なことを言うのだろうか!はあ、とため息をついて額に手を当てるとサボが耐えきれなかったのか勢いよく吹き出した。


「冗談だって。何だエースその顔、ひっでェ面してるぞ」
「冗談だってことぐらい分かってるっつーの!」
「にしてはムキになってんのな」
「サボ!」


声を張り上げたエースにサボはおーこわこわ、と身を凄めた。2人して何やってるんだかと呆れ返る。小突きあってる2人をぼんやり眺めながらああ2人は何だか似ているなとしみじみ思う。髪型とか、性格もほんの少し似てるような気がする。


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