5話(1/3)
やっと冬らしい季節になってきた。今日はよっぽど気温が低いのかはあ、と息を吐くと白くなって現れる。これマフラーしながら自転車漕いでたら鼻息まで白くなるなあと思いながら家まで向かう。
この間の、三兄弟達との生活はどうにかこうにか上手くやってのけたけど、あの3人と過ごすの、体力と精神を使う!いや、本当にしんどい。ルフィは一日中騒ぎまくってるし、サボはサボでからかってくるし、エースは機嫌が悪いのか知らないけど怖い顔をしてるから気を使う。そりゃあ、楽しかったっちゃあ楽しかったけどもうしばらくはあの3人とは過ごしたくない。本当に疲れた!
相も変わらずエースは色んな女の子と遊んでるみたい。私が泊まりに行ってたときも何度か遊んでるようだった。いやあ、何だか、私がどうこう言える問題ではないから本当に何もできないけど、やっぱり気まずいもんは気まずいし、辛いもんは辛いんだ。
「アネモネ〜〜〜ッ!」
何か聞こえた。私を呼ぶ声が聞こえた。い、い、いやあ、そんなまさか。今日は私の学年午前授業だから、こんな、真昼間にヤツがいるわけがないんだ。大体アイツ、今日は部活のはずだし…。しかも午後の授業だってあるはずだし…。
「おい!アネモネ!!」
「ッ、ルフィ!」
ガシッと肩を掴まれ勢いよく振り向かされた。や、やっぱりルフィだった。なんでこんな時間にこんなところにいるんだ!
随分走ったのかぜえぜえと息を整えるルフィをじとりと見ると、私の視線に気付いたのかルフィはにんまりと笑った。いや何笑ってんだお前?
「ね、ねえルフィ何でこんな所に…」
「アネモネ!おめー帰るのはえーぞ!」
「いや、ちょっと話聞いて」
「っは〜、チョロチョロ動くから見失っちまうしよ〜ジッとしてろよ!」
「ル、ルフィ」
「アネモネ!今からおもしれーことしよう!」
ねえ!誰かコイツに会話の仕方っていうのを教えてやってくれない?!何でこうも話を聞かないの!
ルフィはそのまま私の手を掴みグイグイと歩いていく。い、いや待ってよ私は今日やらなくちゃいけないことがあるのに…!
「ルフィ!ルフィったら!」
「なんだよー」
「学校どうしたの!午後の授業あるでしょ? 部活もどうするの?」
「…」
「…」
「…」
「……ルフィ?」
「うるせェ!今日はアネモネと遊ぶンだ!」
ドン!とでも効果音でも出そうな勢いで言われてしまった。何かルフィムスッとしてるし、いや何で機嫌悪くするのかがわからない。学校サボったりなんてしたら兄貴2人に何言われることやら!私も巻き添え食らって怒られてしまう。私の手を掴むルフィの力がほんの少し強くなったような気がした。一体どうしたのだろうか。
それよりも、一体どこに行くつもりなのだろうか。ルフィのことだからゲーセンとかに行くんだろうけど!まあこうやって遊ぶの久しぶりだから、ほんの少しだけ楽しみだったり。
「アネモネ!」
「なに?」
「今日はおれについてきてくれればいいからよ!余計な心配しなくていいからな!」
そういってまたあの太陽みたいな笑顔を向けてくるルフィをしばらく見つめてるとルフィがゴツンとおでこをぶつけてきた。あまり痛くなかったから良かったけど、何だかルフィがほんの少しだけカッコよく見えた。
あールフィの笑った顔好きだなあ。そんなことをぼんやりと考えながら手を引かれるままルフィについていくことにした。
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