2話(2/3)

「…なァ」
「んー?」
「こないださ、エースと夜中会ったんだろ」
「ッ、え……………」
「エースから聞いたよ。帰ってきたらアネモネが外にいたって」
「…そ、なんだ」


名前を聞いただけで過度な反応をしてしまう。いい加減このクセをやめたい。普通に、普通に話をしているだけなのに。やましいことなんて何もないのに、こんなに分かりやすく反応しちゃうの、本当にやめたい。

名前を聞いただけで、私の中でエースが笑う。私の名前を呼ぶ。頭の中が、ぐるぐるする。


「…アネモネ」
「…ん?」
「うち、寄ってけよ」
「い、いいよ…迷惑だろうし」
「いいから」


有無を言わさないサボに押し負けた。私はうんとも言わなかったけど、その沈黙は肯定として捉えられたに違いない。

家までの帰り道がただただ長く感じた。







「飲み物取ってくる、好きにしてて」
「は、はあ…」


久しぶりに家に上がったと思う。昔と何一つ変わっていない。ただ、前は3人とも同じ部屋で寝ていたはずなのにいつの間にか1人ずつ部屋が別れている。小さい頃やけに空いてる部屋があるなあとは思ったけど、こういうことだったのか。ロジャーおじさんとドラゴンおじさんよく考えてるなあ。

あ、これ前に4人でお祭り行ったときに射的で取ったやつだ…懐かしい。もうチョッパーマンのぬいぐるみとか売ってないからなあ…。最近はベポたんが人気だからなあ。


「……………何してんだ」
「ハ!あっ、いや別に!あの!別に…別に」


チョッパーマンのぬいぐるみを抱き締めては部屋の中をキョロキョロ見回してると飲み物を取ってきたサボに変な目で見られた。やめろその目!仕方ないでしょ久しぶりなんだから。あ!ミルクティーだ!サボ私の好きな飲み物分かってるね。


「おれの部屋きたの初めてだっけ?」
「うん初めてだよ。いつから一人部屋になったの?」
「高校上がってからだな。中学のときにはもうお互いの部屋はあったけど何だか慣れなくてずっと3人でいたなァ」
「あ〜そうだったんだ?みんながいつもいた部屋はどうしたの?」
「あそこはルフィの部屋になってる」
「ふーん…。そういえばルフィと遊ぶときやけに物置いてないなあとは思ったわ」
「はは、そうだろ?」


気を使わなくてもいいっていうのが、とても楽で仕方ない。無駄に気を張らなくてもいいし、何よりも、やっぱりサボの隣にいるのがすごい落ち着く。有難いなあ、サボは私にとって支えだ。こんなこと、口が避けても言えないけどいつかはちゃんと態度に示そう。


「サボー!じいちゃんがお土産くれた!」
「おいルフィ部屋に入るときはノックしろって言ってるだろ」
「うお、アネモネ!アネモネじゃねェか!ひっさしぶりだなァ〜!!」
「久しぶりってほどでもないでしょ、学校一緒なんだから」
「見かけても声かけれねーんだ!アネモネ歩くのはえーし教室行って一緒にメシ食おうと思ってもいねーんだぞ!久しぶりだ!」


確かにさっさと歩くクセはある。お昼も外で食べるために教室からさっさと出て行っちゃうし、同じ学校でもルフィとはあまり顔を合わさないかも…?そう考えたら久しぶりっちゃあ久しぶりかもしれない。


「アネモネ!これやるよ!じいちゃんから貰ったヤツ!」
「何これ?」
「アイス!」
「ばっ、ルフィ冷やしてこい!溶けちまうだろ!」
「今食おうぜ、今!おれ腹減った〜」
「あとでな、あとで。あとでメシ作ってやるから」


2人でてんやわんやしてるのを眺めてるだけなのに、もうおかしくって仕方ない。コロコロ変わるルフィの顔を見ては忙しいなって思うし、そんなルフィに対応しているサボを見てるとお兄ちゃんやってるなって思う。

今日の晩御飯をワニ飯にすると約束して部屋から半ば無理矢理追い出したサボは酷く疲れているように見えた。


「良かったの?ルフィ追い出しちゃって。私はいても良かったのに」
「ルフィいたらアネモネ泣けないだろ」


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