1話(2/2)

「アネモネか?」
「っ、あ、え…エース…?」
「こんな時間に何してんだ。しかもそんな薄着で。あほか」
「…エースこそ、こんな時間まで何を」


久しぶりに見た。多分、1週間ぶりくらい。

久しぶりにに見るエースは何だか遠い人のような感じがした。どうしても、真っ直ぐエースの目が見れなくて私は視線を逸らしてしまう。エースなのに、エースじゃないみたい。


「何してたんだよ?」
「…ゴミ出し。あと今からコンビニ行こうかなって」
「こんな時間に1人で出歩くな。何かあったらどうすンだよ」
「ないよ、そんなの」


はあ、とため息をつかれる。だって、ないもん、そんなこと。俯いたまま顔を上げることができなくて、早くエース家の中入れと何度も何度も唱える。何も物音がしなくなってから恐る恐る顔を上げてみると、エースがただ何も言わずにジッと私を見つめていて身が縮んだ。


「な、なに…」
「…なんでもねェ」


そう言ってバタン、と家の中へと消えていった。
心臓がバクバクする。一気に精神がやられた。

変わった理由なんてもうずっと前から知ってる。私がエースを幼馴染として見れなくなったから。いつの間にか1人の男性として見るようになってしまってからだった。

元々人気のあるエース。勿論のことルフィもサボもとても人気だった。そんな3人と幼馴染でいられる私も鼻が高くて仕方なかったし、大好きな幼馴染が人気者だということが嬉しくて仕方なかった。

でも、私は気が付いたらエースにだけ特別な感情を抱いてしまった。それから、全部変わってしまった。

高校に上がってからエースは家に帰ってくることも少なくなって、女の子とよく遊ぶようになっていた。中学の頃も女の子とは遊んではいたけれど、それとは違う。もっと大人な雰囲気を纏っていた。

理由は分からない。ただ、エースとサボが高校に上がってから4人で遊ぶ時間がぐんと減って、みんながみんなすれ違うようになっていた。それは、間違いなかった。

女の子と遊ぶエースを見かけては何で好きになっちゃったんだろうととても悩んだ。今でも悩んでいる。家には帰ってこないし、女の子とは遊んでるし。私がエースのことさえ好きにならなければこうなることはなかったんじゃないのかと思うくらいに私は参っていた。

誰よりもエースに近かったから、きっとどこかで自惚れていたのだと思う。だから、エースに寄ってくる女の子がみんな羨ましくて、憎くて、仕方がなかった。


コンビニになんて行く気にはもうなれなくて。

久しぶりに見たエースは、どんなに遠い人のような感じがしても、それでもやっぱり私の大好きな人に変わりはなかった。

どんどん溢れてくる涙を止める術なんて知らない私はただただ目元を強く擦ることしかできなかった。


TOP

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -