10話(3/3)


『エースへ。

エースがこの手紙を読んでるということはきっと私はもうこの土地からいなくなっているのでしょう。直接話しをすることもなく黙ってエースの前からいなくなることを許してください。
引っ越しの話は、本当に急のことだったの。卒業間際で、とても中途半端な時期だけどどうしても引っ越しせざるおえなかったみたいです。その気になればここに残ることだって出来たけれど、そうしなかったのは私の意志です。

この間、私が言ったこと覚えていますか。
私は変わらずエースのことが欲しいと思っています。でもそれはきっと叶わない。私実はずっと前からエースのことが好きでした。でもエースにはたくさんの女のお友達がいる。それが私はとても辛かったです。幼馴染だから、どこか余裕を持っていたのかもしれない。でもそれは間違いでした。

これから先、私とエースは会うことはないでしょう。それはルフィとサボも同じ。引っ越すことが決まってから私はエースのことで悩まなくてもいいんだと思って、とても心が軽くなりました。本当です。だから、エースも私のことは忘れてください。私もエースのこと、忘れます。

ルフィとサボに、よろしくねって。伝えておいてください。もう会うことないけどね。
長くなってしまったけど、ありがとう。エースのことを好きになった期間はとても幸せでした。

ありがとう、大好きだったよ。

アネモネ』


おれは急いでアネモネの携帯に電話をかけた。無機質な音が続く中、やっと出た!と思えばコールセンターの女の「現在この番号は使われておりません」という声だった。ふざけんじゃねえ!どうしようもないこの気持ち、おれは一体どうしたらいいっていうんだ。


なあ、アネモネ。今更こんなこと言うのもずりぃと思うけど、おれだってお前のことが好きだったんだ。昔のおれはあまりにも幼すぎて、ヤキモチを妬かせることでお前の気持ちを確かめてたんだ。…子供くせぇ、よな。それも年を重ねるごとにヒートアップさせていった。その度に切なそうな顔をするアネモネを見て、ああ、お前は本当におれのことが好きなんだなって、自惚れてた。それがお前のことを苦しめると知っていながらも。歪んだ愛だって分かってる。

サボの言ったすれ違ってるという言葉が頭の中を何度もかけめぐる。すれ違ってるどころじゃねえよな、これ。取り返しのつかねェことをしちまったことに、アネモネがいなくなってから気付くなんて、ほんとにバカだよな。…バカなんて言葉じゃ言い表せねェくらい、ほんとに、バカだ。


おれがあのとき、アネモネがおれのことが欲しいと言ったあのとき、ちゃんと掴まえておけばよかったんだ。あれはお前が最後の勇気を振り絞った言葉だった。おれ、まさか本人の口からそんな言葉が出ると思ってなくて、面食らってた。嬉しかったんだよ。なァアネモネ、もうおれくだらねぇ女遊び全部やめるからよ。今までのこと全部謝るからよ。だからもう会うことなんてないとか言うんじゃねェよ。また連絡よこしてこいよ。なァ、アネモネ。

お前、嘘ついてるのバレバレなんだからな。何がおれのことを忘れるだよ。そんなの無理に決まってるだろうが。ふざけんな。勝手におれのことを忘れるなんて、そんなのおれが許さねぇ。



おれだって、お前のことが好きだったんだ。


手紙の一番下に何度も書いては消したのか、そこには会いたいよ、会いにきてよという字がうっすらと残っていた。なぁ、アネモネ、おれちゃんと探しに行くからよ。頼むからおれのこと忘れないでいてくれよ。必ずアネモネのこと見つけ出して、抱き締めにいくからさ。



end.


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