7話(3/3)
どうしたの?と聞いても何も答えない。沈黙が流れる。お皿を洗い終わらせたから、座りたい感がある。ルフィ何か反応してくれないかなあ。
「ねえどうしたの、今日ちょっとルフィらしくないよ」
「…き…、だ」
「え?なに?」
「…何でもねえ! 」
パッと私から離れてはソファーでゴロゴロし始めるルフィに首をかしげる。一体何を言いかけたのだろうか?訳も分からず、向かいのソファーに座った。こっちにこいよ!と口を尖らせるルフィに私は困ったものだと思いながらも隣へ腰掛けた。
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はあ、と一息。いやため息をつく。
ルフィのやつ、実は家で課題をやってたのにいきなり「用ができた!」とかいって出てきたらしい。あまりにも帰りの遅いルフィを探しにサボが家にやってきた。
まさかサボもルフィが私の家にいるとは思ってなかったみたいで困ったように笑ってた。ソファーで熟睡してるルフィを抱きかかえてサボは今度は遊びに来いよって言って出て行った。
なんだか、ルフィとサボに会えただけで今日は大分幸せだった。欲張りな私は、エースにも会いたいって思ってしまう。
サボが迎えに来たあたり、きっとエースはまたどこかに遊びに行ってるのだろう。今日会うのはきっと厳しいだろうから、せめて声だけでも!
「…はあ、ダメだこんなの」
自分の都合で勝手に突き放して、それでまた自分の勝手な都合で近付いてって。これってすごい自分勝手じゃない? ああ、でもこんなこと考えてたらきりがないんだろうなあ。
タイミング良くピコン、と鳴った私の携帯。そこにはウソップからの「明日の時間割教えてくれ!」という連絡だった。シンプルに返信をしてから私はエースの連絡先を開く。
要件なんて、特にない。用が無いなら電話してくんな、って言われそう。言われたらきっと私は立ち直れないかもしれない。それでも、私、今とてもエースに会いたい。エースの声が聞きたい。
意を決して通話ボタンを押す。
コール音が、頭の中にいつも以上に響く。長く続くコール音が怖い。エース、出てくれるかな。
「! あ、エース…!」
『お留守番サービスに接続します。合図の音がしましたら──…』
「……………ああもう」
出たかと思えば! 留守電を残そうか迷ったけど、なんて言えばいいかも分からなかったからそのまま通話終了した。
出るかな、なんてちょっと期待していたのがだいぶキてる。遊んでるかもしれないから、出られない可能性があるのだってわかってたけど、それでも出てくれるんじゃないかという期待の方が大きくて大きくて。
出なかったものは仕方ない。そう思っているのに、拒絶されてしまったとバカな考えをしてしまう自分がいてとても苦しい。そんなわけない!とは思っているけど。実際、どうなのだろうか。
ああさっきルフィにも考えすぎだって言われたばかりなのに!自分の頬をパンパンと叩き叱咤する。明日、明日エースに会いに行けばいいんだ。そう、会いに行けばいいんだ。
気が付けばもう日付が変わりそうになっていた。私は布団の中に潜り込んで目を閉じた。ああ、何でもないことなのに、どうして私はこんなに弱いのだろうか。閉じた目の奥からぶわあと溢れてくる涙を止めるすべが分からなくて私は何も考えないようにした。
明日、エースに会いに行けばいい。それだけのことなんだから。
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