3話(3/3)

そろそろやばい。本当にやばい。このまま本当にどこかに連れていかれたらどうしよう。ていうか名前知ってる時点でほんとに気持ち悪いから。なんで私の名前知ってるの?もう今日はなんつー日なの!勘弁してよ!


「さ、行こっかアネモネチャン」
「やだってば…!離してよ!」
「そんな嫌がらないでよただご飯行くだけなんだから〜」
「おいそいつから手を離せよ」


聞き覚えのある声にバッと顔を上げる。ああ、どうして、何でここにいるの。


「ッ、エース………!」
「誰かと思ったらおめーらかよ。寄って集っておれの身内に何してんだ?用があるならおれが聞くぜ」
「クソ、行くぞ…エースが来たんじゃもう無理だ」


エースが現れるなり顔色を変えた男達はゾロゾロと立ち去って行った。けれど、私の腕を掴んでた男だけは残って、エースとただただ睨みあっていた。そんな2人をじいっと見つめて気が抜けてたから、男がいきなり首元に顔を埋めたのにはとても驚いた。それにエースが反応して男に掴みかかろうとしたのをサッとよけて男は「またねアネモネチャン」だなんて言って去っていった。ふざけんなもう二度と会いたくねーよ!


「あっ、あ、助けて、くれて、ありがと…2回も……」
「アネモネ!おめーこんな時間まで何してんだ!アホか!心配かけさすんじゃねェよ!」
「…?!えっ、え、は?」
「は?じゃねェだろ!…たく、おれが来なかったら今頃どうなってたと思ってんだ」


はぁ、とため息をつくエースにこっちもため息をつきたくなる。何でこんな、普通に私に話しかけてくるの?助けてくれたのは、なんかあの、情けだとして、何でこんな、話しかけてくるの?自分で関わるなって言ってきたくせに、なんで?


「な、んで…エース、私に話しかけるの」
「あ?何言ってんだお前…」
「だ、だってさっき!エース、めんどくさいから、関わるなって…!!」
「…………………! バッ、あれは!あれはああいう女達とは関わンなって意味だ!今日はたまたまおれがいたけどいつもいるとは限らねェ!」
「は、はあ〜?何なのほんと…!言葉足らないんだよエースは!バカ!」


バツが悪そうにガシガシと頭をかくエース。関わるなって言葉が、私に向けられた言葉じゃなかったというのがわかって安心した。あれだけ悩んでたのが馬鹿らしくなっちゃって、涙がまた込み上げてきた。


「……つーか、お前いちいち無防備なんだよ」
「え?」


上手く聞き取れず聞き返すとエースは私の腰をグイッと引いた。突然のことに驚くも、エースはそんなのを気にもとめず私の髪の毛をかきあげた。な、なんかついてる?どうしたのかと聞いてみても何も反応をしてくれない。な、なんなの?私になんかついてるの?

しばらくするとチィッ!と大きい舌打ちが聞こえて恐る恐るエースの顔をのぞきこむともうこの世のものとは思えないくらい怖い顔をしていた。えっ、なに私何かしたのだろうか。


「エ、エース、なんか、ついてた?」
「…………無防備すぎるんだおめーは!本当に!クッソ、腹立つ…!」


思い切り怒鳴られて怯む。もう今までこんなに怒鳴られたことはないってくらいすごい勢いで怒鳴られた。な、何よ、私なんかした?何もしてないでしょどう考えても被害者でしょ?!

気が付いたらエースはもう公園から出ていて、早く来い!ってすごいカリカリしながら私を待っている。待ってくれてるあたり、優しいとは思うんだけど、でも何でだろうすごい怒ってる。私ここのところエースのこと怒らせてばかりな気がする。

家までの帰り道はお互い言葉を交わすことなくただただ歩き続けた。気まずいったらありゃしなかった。何に起こってるのかすらわからないし、何かをした記憶もないから謝ろうにも謝れない。それでも不謹慎な私は、エースの傍にいれると思えたらとても嬉しくて仕方なかった。


お家に帰ってお風呂上がりに鏡を見てみると首元に蚊に刺されたような跡があった。公園で刺されたのかな?でも触っても痒くないし、いったいなんなんだろう?この首元の跡が原因でエースが怒っていたと知ることになるのは、数日後の話。


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