ざあざあと窓に何かが叩きつけられるような音で目が覚ます。外をチラリと覗いてみたらとんでもない雨風が島を襲っていた。おれは咄嗟に飛び起きて人が集まってるであろう食堂へと向かった。

「おい!外見たか?!すげェ嵐だぞ!!」
「そうデケェ声で騒ぐんじゃねェよい…」
「こんなの、アクアラグナと匹敵するくらいなんじゃねェのか!?」
「アクアラグナに比べたらまだ可愛いモンだねい…」
「本気で言ってんのか…?これじゃ外には出れそうにねェか」

船が湿気に包まれて、船員みんな浮かない表情を浮かべてる。通りかかったナース達はみんな「洗濯物が乾かないじゃないもう!」と憤慨してる様子だった。

……キンモクセイは、この雨の中でもずっとあの木の下にいるのだろうか。チラリと窓の外を見やる。外に行きたくて仕方がなかった。

「………エース、一応言っておくが、間違っても外には出るんじゃねェぞい」
「……………出ねェよ」

横目でマルコを見る。あの目、俺を信じてねェな。言われなくたって、出て行かねえよ。浮かない気分で食堂を後にする。…そういや、サッチがいなかったな。あの野郎、あのあと娼館にでも行ったんじゃないだろうな。俺腹が減ってしょうがねェんだけど!


その日はナース達の作った飯でどうにかなったけど、やっぱり量が少なくて早くサッチに帰ってきてほしかった。

溜まった書類を整理するのでその日は潰れた。翌日になっても、風や雨が収まることもなくて、窓の外は花と紅葉が風にすべて持っていかれて、すべてがオレンジ色に見えた。あの中に、金木犀も混じってるのだろうか。キンモクセイに、会いたい。

「エース」
「んお?なんだ、イゾウか」
「これ、おれのところにお前ンとこのが混ざってたぞ」
「あっ、わりいなわざわざ」

そういやコイツ、こないだまでケツやばかったけど今は平気なのか?あのときのイゾウは本当に見てられたもんじゃなかった。じい、と見てたらイゾウに「なんだ?」と言われ首を振る。

「…秋が、終わるな」
「は?」
「いや、この島のこの台風だ。オラーンジュティフォーネと言ってな。秋の終わりを告げる台風なんだ」
「………じゃあ、この島には冬が来るっつーことか」
「エース、お前さん。この島の花の少女に会ってるだろう」

ビク、と体が震えた。勢いよくイゾウの方を振り向くと、やけに真剣な目つきでおれを見ていた。

「秋が終わるということは、花の少女もいなくなるぞ」
「っ、何言って…」
「金木犀は雨風に弱い。すぐに散ってしまう」
「…!」
「脆いモンだな…、花は。……エース、今日は諦めろ。出航まであと今日を含めないで2日。ちゃんと探し出してやれ」
「………………イゾウ」

それだけ言うとイゾウは眉を下げながら笑い、俺の頭に手を置いてから部屋から出て行った。


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オラーンジュティフォーネ、ドイツ語でオレンジの台風。造語です。


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