「つ、つあ、うっ、疲れた〜…」
太陽が激しくてる季節になった。俺はここのところ毎日モイさんの手伝いやファドの牧場の羊たちの世話に追われてヘトヘトだ。疲れを知らないnameは忙しなく走っている。ファドの目を盗んで少し休んでいると、羊が後ろから突っ込んできてもう無理だ再起不能です俺は疲れました。
「おーいリンク」
「あれ、モイさん。今日は手伝いないはずじゃ…」
「いや違くてよ。ここんとこずっとバタバタしてたろ?その、なんだ。ちょうどこの時期城下町で祭りやってるから息抜きにどうだ?」
おーいおいおいおい。モイさんいきなり何がどうしたっていうんだ。いや気持ちはありがたいけど、その、あれだ。少し(どころじゃない)気持ち悪い。やけにそわそわしているモイさんを見てるとこっちもソワソワする。なんだっていうんだ?本当に。
いやまあでも、たまにはお祭りっていうのもいいかもしれない。イリアとname誘ってさ、うん。そう考えたら今すぐにでも行きたいね。
「じゃあ有り難く休ませてもらうことにする」
「おう、そうしてくれや」
「え、今だよな?今もう全部やること放棄して行ってきてもいいんだよな?」
「ん?お、おう…?」
「よしっ、おいnameー!帰るぞ!」
今すぐ行っていいなら行ってやるさ!俺が名前を呼んだのと同時に駆け寄ってくるえみり。それとまた同時に耳が劈くようなファドの怒鳴り声。ひゅう、と口を鳴らせばグットタイミング!エポナがすぐ飛んできてくれた。さっすが俺の愛馬!一撫ですると早く乗れと言わんばかりにブルブルと首を振る。エポナに跨ってからnameの手を引っ張って乗せてすぐに走り出した。遠くからファドが何かを言ってるけど、今日はすまん、見逃してくれ!毎日毎日お前んとこの羊たちに踏まれるのはもう懲り懲りだ!
「マスター」
nameに呼ばれ何かと思い、差す指の先を辿ってみれば俺らめがけて追いかけてくるトアルヤギの群れ。おいおい、それはないだろ勘弁してくれ!
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「夏風邪引いたから無理パス帰って」
バタンと大きい音を立ててしまったドア。ファドのとこのヤギから逃れて村まで戻ってきた俺たちは、祭りにいリアを誘おうと思って家まで行った。すると背後にどす黒いオーラを放ちながら現れたイリアに短く早口で捲し立てられてしまった。
な、なんだよ。もう少し優しく言ってくれたっていいじゃないか、何だよあの態度。
「……イリア、無理そうだな」
「ハイ」
「……………どうする?」
「私にそう聞かれましても」
「よし、じゃあ2人で行くか!」
ええい、もうこうなってしまっては2人で行くしかない!nameの手を掴んで歩きだそうとしたら、ドアが勢い良く開いてイリアがnameの肩を掴んだ。俺よりも低いんじゃないかと思うくらいの声で「name借りるわよ」だなんて言われたら断れるわけもなかった。イリア怖い。
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「マスター」
あれから30分くらい経ってからようやくnameが出てきた。時間がかかったなと思い目をやると、いつもとは違うnameの姿が。ほんの少しめかしこんで、着ている服もトアル民族伝統の服を着ていた。いや、うん、元々整っていた顔もしていたし、うん。いや、うん。
「name、その格好は?」
「今日くらいおめかししなさい、とイリアが」
ははーん、そういうことか。イリアのやつ。
nameはくるりと回ったり、腕をあげたりして自分の姿を確認する。うっ、その仕草ちょっとヤバイ。
「似合って、いますか?」
「え?!あ、おう、えっと…」
上目遣いで覗き込むように俺を見る。いやほんと、お前そんなのどこで覚えてきたんだよ。いつもと違う服を着ているせいなのか、nameがまるで違うように見える。
「…と、言った方がマスターが絶大なダメージを受けるとイリアが仰っていました」
「ッく!あのバカ……!!」
純粋な俺の(?)nameに変なことを吹き込んだのはイリアだったのか!もうホントにやめてくれ心臓に悪いから、ホントに!
じっと見つめてくるnameに俺はしびれを切らして頭をグシャグシャと撫でた。
「? マスター、聞こえませんでした。」
「そんなわけないだろ、常に聴力全開にしてるくせに」
「今のだけ聞こえませんでした」
「、可愛いよ」
いつの間にやら口達者になり、冗談のきくようになったname。うまいように言いのけてくるからとても腹が立つ。こっちが可愛いを言うだけにどれほどの精神を使ってるのか知らないんだ、まったく!当の本人からの反応が全くないことにも少しムッときて覗き込むと、顔を真っ赤にしているnameが。そんか姿を見て俺も顔が一気に熱くなるのを感じた。
「なっ、なにそんな!顔!赤くして…!」
「マスターこそ、茹でダコのようです」
「待てよそれはnameの方だろ」
「私はりんごです」
「ふは、そっちの方が赤いよ」
たまらず吹き出す。どう考えても茹でダコとりんごってりんごの方が赤いだろ。ケラケラ笑うとジッ、とnameが見つめてくる。ああ、怒ったかな?
「ごめん、そう怒るなって」
「…いえ、そういうわけではなく」
「ん?じゃあなんだ」
「………………何故人間は、「アンタ達いつまで人ん家の前にいるのよさっさと行きなさーい!!!」
小太刀を片手に今までのどのイリアよりも恐ろしい顔で怒鳴り散らしてきたから咄嗟に俺はnameの手を掴んでその場から離れた。あんなに怒らなくたっていいのに!イリア怖い。
そういえば、nameさっき何て言おうとしたのだろうか。チラリと目をやると、いつもと変わらない表情のname(いやまあいつも無表情だけども)。何でもなかったのだろう、俺は口笛を鳴らしてエポナを呼んだ。
御祭
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