俺らが生まれるうんと昔に天空人、という人たちがいたらしい。大地の一部が空に浮かび、そこに天空人は巨大な島を扱い、生活していたそうだ。昔の技術も発達していたらしく、その歴史的建造物や昔使われていたものもたくさん残っている。それを現代の俺たちは空島と呼んでいる。

その昔に、とんでもない殺戮兵器が作られたようだ。形も大きさも、どれくらい恐ろしい兵器かということは何一つ分かっていない。そんな殺戮兵器が、今現代に残っているという。いつ目をさます、もしくは稼働しだすか分かったもんではない。

その情報を集め、伝えてくれたのはテルマさん。兵器を探しに行こうと言い出したのはイリア。兵器を処分しなくてはならないと言ったのがシャッド。兵器を探しに行けと言ってきたのがこの3人。拒否権も何も与えてくれなかった3人は兵器が隠されてある(しまわれている?)場所を調べだし、俺に全てを丸投げしてきた。俺自身、気になってはいたから別にいってもいいのだけど、こうも丸投げされてはさすがにやる気も失せる。(いや探す気か)

「にしても随分辺鄙なところにあるな…」

地図を見ながら歩みを進める。フィローネの森の奥に小さな祠があるらしく、そこに例の兵器があるらしい。今ハイラルは俺がガノンドロフを封印したからまたあのときみたいな悪夢が起こることはない。平和なのだ、ハイラルは今。だからそんな恐ろしい殺戮兵器はいらない。(もしまたそんな悪夢が起こったとしても俺がまた世界を救ってやるさ)

しばらく歩くと随分とまあ雰囲気だけ神聖なところに来た。草花が生き生きとしている、木漏れ日が森を輝かせてる。小鳥の鳴き声もどことなく楽しそうに聞こえる。

「ここら辺、か…。祠なんて無さそうだけどなあ」

地図に×印がついてるところまでやってきた。一通りあたりを見てみたけど祠のようなものなんて何もない。本当に平気なんてあるのか?またテルマさん冗談話を作ったんじゃないだろうな。

無駄足だったか、とぽつりと呟いてその場から立ち去ろうとした瞬間、この場に合わない電子音が聞こえてきた。意識を張り巡らせると(いかにも)怪しげなツルが垂れ下がっていた。迷わず引っ張ってみると目の前の植物があっという間にはけていった。そして目の前には祠というよりかは箱があった。直感でこれか、と思った。この箱の中には兵器がある。もし簡単に壊せ方なものであれば今ここで壊していこうと思った。

「さて、中身拝見させていただきまーす」

箱を開けてみると、まず俺は自分の目を疑った。俺は兵器を探しに来たはず。それが何故俺は、今、兵器ではないものを目にしている?テルマさん、やっぱり俺をからかっているのか?くだらない、そう思いながら俺は箱を閉じようとした。その瞬間、またさっき聞いたこの場には合わない電子音。耳をすまさなくても、意識を張り巡らさなくても、どこで鳴っているか分かる。俺が今、手にかけている箱から鳴り響いている。でも、おかしい、俺は信じない。だって、箱の中に入っていたのは俺と同じくらいの

女の子だったから。

人間からこんな電子音が聞こえるわけがない、おかしいんだ。旅をしている時、ありえない!ということはたくさんあった。でもそれとこれとは別だ。話が違いすぎる。殺戮兵器を探しに来たら女の子が眠っていた、こんな話、おかしいだろう?

「起動中………ダウンロード完了マデ、あト、25パーセんと」
「うわっ?!」

喋った、今発した言葉は僕らと同じ言語だけど理解することができなかった。でも今、確かに喋った。箱の中にいた女の子は立ち上がり目を開けた。

赤く、燃え上がるように赤い目だった。

「目の前ノ人物特定チュウ…マスターではないとイウ事ヲ確認。………………マスターの死亡を思イ出しマシた。彼はイナイ。青年、アナタヲ私のマスターとしマス。手ヲ出して下さイ」

彼女の言ってることが分からない。マスターって何だ。死亡してるってどういうことだ?それより、俺がマスターってどういうことだ。彼女の目が喋るたびにチカチカしている。俺が手を出すのを待っている。俺は断ることもできず、彼女の手を握った。どこにでもいる、女の子の手だ。人間味がある。

「青年の心拍、体温ノ確認中……コレはマスターと似ていル。青年の情報のインプット完了、ナマエ登録しマス。名を述べヨ」
「リ、リンク……」

俺が名を口にした瞬間、女の子はほんの少しだが表情を変えた。表情をほんの少し変えただけで何も言わなかった。ほんの少し悲しそうに見えたのは気のせいなのだろうか。彼女は「登録完了」というと、箱から出てきて俺に跪いた。

「ちょ、ちょっと、やめてくれよ!ほら立って立って!」

跪いた彼女を立ち上がらせようと同じくらいの顔の位置に合わせる。立たせようとしたら(こんな言い方は失礼なのかもしれないけど)女の子の力だとは思えないくらい力が強く、俺が腕を掴んで引っ張り上げようとしてもビクともしない。

「私は今から八千年前、世界が壊れてしまわぬヨウ、最終兵器としてラネールの船上員たちが作り上げタ人間型大量殺戮兵器デス。勇者様の活躍により、私が使われることはあリマセんデした。ソシテ、一度封印され数九百年前に人間たちが私を発見シ、ナカをいじられ、兵器としてまタ更に改良されました。私ヲ使ウ王が沢山居マシた。命令されるたび、私は国を滅ぼし続ケマした。私の戦闘力を恐れた王もう一度私ヲ封じマシタ。ソシテ、百年前私を発見したーーー…」

顔を上げて俺の目をまっすぐ見ながらか自分のことを喋る少女。随分と長く話しをしてくれてるから全然頭に入ってこなかったけど、今この子は自分で言った。「大量殺戮兵器」だと。こんな女の子が、兵器だなんて、おかしい。と、考えていたら突然言葉が途切れた。顔を覗き込むと目が激しくチカチカしている。あの電子音も激しくなり続ける。

「申し訳ごザイませン。記憶が欠陥していマス。データ復元に時間がかかります」
「い、いいから!もう大丈夫だ、もういい」
「そう仰りますのなら、データ復元を一時中断しマス」

そう言うとチカチカしていた目と、激しくなっていた電子音も鳴り止んだ。少女は立ち上がると俺を一通り見てふう、と一息を吐きそうな顔をした。人間型ということはロボットだかなんだかの一種なんだろう。本当によくできている。街にいれば普通の女の子にしか見えない。こんな子が、たった一人でいくつもの国を滅ぼしたと考えるだけで頭が痛くなる。信じたくもない。

「聞きたいことがあるんだけど…」
「ハイ。現在の私のマスターはアナタです。私はあなたの命令には逆らえまセン。何なりとお申し付けくだサイ」
「命令とかそういうのをするつもりはない!……キミは誰の手によって作られたんだ?」
「製造命令を下したのは人間デス。製造をしたのはラネールの船上員たチ。改良をしたのは命令をした人間とはまた別の人間デス」

人間の手によって造られたという少女。ロボットだからなのか、やっぱり感情はないのだろう。淡々としている。さっと髪を撫でてみる。ロボットだなんて信じることができない。ただの女の子だ、この子は。殺戮兵器として生きるだなんておかしい。

「俺がキミのマスターなんだよな?」
「ハい、そうデす」
「俺の言うことは聞いてくれるんだよな?」
「モチろンです。本来の目的を制限されない限り逆らうことはありまセン」
「じゃあ、人を殺したり、国を滅ぼしたりしないでくれ」
「ハイマスター」

とりあえずこれでこの子が誰かを殺したり、国を滅ぼす可能性はなくなった。俺は俺のできることをしなくては。

それにしても、今まで自分がしてきたことをやめろと言われてよくショートしないなと思った。普通、自分の役目である殺戮行為をマスターにやめろと言われたら、プログラムがショートするはずなんだ。自分のやるべきこと、マスターの絶対命令、どちらをとるかで迷って大抵のロボットはショートする。

「それ以外に私は何をしてればイイのデしょうか」
「え!!?あ、えっと。うーん…と、とりあえず俺の言うことを聞いて、俺のそばにいてくれればいいよ」

突然の質問に戸惑いはしたけど、少女もさっきみたいに「ハイマスター」と言い、俺の指示待ちをしている(まるで犬だ)。ショートしなかったのは自分の目的を禁じられたら次の目的を決めるというプログラムか何かが搭載されているからショートしなかったんだろう。昔の技術ってなんだかんだすごい!シャッドが聞いたら驚くだろうな。

「じゃ、とりあえず移動しようか」
「ハイマスター」

とりあえず、少女を連れてフィローネから出てテルマさんのところに戻ろう。外で待ってるエポナも心配だし。歩き出すと後ろから衝撃音が。振り返るとツルに足を取られ転んだ彼女が地面に伏せていた。

「スミません。起動したバカリなので感覚調整が完了しておりまセン」

………こんな子が国を滅ぼしたり人を殺したりする殺戮兵器な訳がないって心の底から思うよ。
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