「リンクー、お父さんが呼んでるわ」
「ん、もう少ししたら行くって伝えといて」

パタパタとかけていく幼馴染の後ろ姿を見つめる。nameが死んでから、あれから半年が過ぎた。あのときは、本当に何が起こったのかが分からなくて気を失って目を覚ましてからnameがいなくなったことに酷く動揺したものだ。
どうやらレナード牧師が、恐怖に耐えきれず行ったことらしい。俺と2人になる前に何かを受け取っていたもの、あれちゃんと確認をしておけば良かった。目を覚ましたらレナード牧師がいて何度も何度も頭を下げてボロボロ涙を流すもんだから、ブン殴ってやろうにも殴れなかった。

ずるいよな、nameのやつ。勝手に喋って、勝手にいなくなってさ。勝手に自分の思いを勝手に伝えて、勝手に…勝手に。なあname、お前まだ俺の気持ち聞いてねえじゃん。何で返事も聞かずに勝手にいなくなるんだよ。

お前、本当に変わったよな。初めて会ったときに比べたらさ、すごい綺麗になったしすごい人間らしくなったよ。最初の頃は、どうしても人間として見れなかったけど時間が経つたび、すごい人間味が増していってさ。気が付いたら一人の女の子として接してた。ほんとに、変わったよ。そんなnameに、いつの間にか惚れててさ。
人間と兵器って、絶対に交わるもんじゃないけど、それでも俺、nameとなら何でも乗り越えられるような気がして。だからあの時言ったろ?2人でどっか行こうって。あれ、ぶっちゃけ本気だったんだぜ?

俺、今まであやふやにしてきたけど、nameのこと好きだったよ。こんなことになるなら、もっと早く伝えておけばよかったってすごく後悔してる。つーか、俺男なのに、女のnameから告白させるってめっちゃカッコつかねえな。すげェ悔しい。


なァ、name。お前あの時どんな気持ちだった?いつだったか、涙は出ないようになってる設計だって言ってたけど、あのとき、確かにお前泣いてたぞ。
あと、不謹慎かもしれないけど、初めて見たnameの笑顔、すごく綺麗だった。
あんな風に笑えたなら、ずっとそう笑ってくれりゃ良かったのに。お前の笑顔がさ、頭からずっと離れないんだよ。涙の意味も、気になってしょうがねェし。涙ぬぐってやれなかったこととか、抱きしめやれなかったこととか、もうすげェ後悔しててさ。あの日から、俺まだ立ち直れてないし、まだあまり眠れてないんだ。nameの最期が、頭から離れなくて。目を閉じると、nameの笑顔が瞼の裏に焼き付いて、眠れないんだ。

「リンクったら、早く来てよ!」
「ああ、ごめん。今行こうと思ってた」

一向に出てこない俺を呼びにわざわざイリアがまた来た。イリアも、最初のうちは引きこもりっぱなしで食事も喉を通らなかったらしい。今は大分立ち直ったのか前みたいなおせっかいが復活してきてる。

俺だけ、俺だけがまだあの日から進めていない。

外で待つイリアを横目で見ながらかけてある上着を手に取る。今日は雪が凄いな。外で身を縮めながら待つイリアに自分で使おうと思っていたマフラーを渡す。name、今こっちは冬だよ。

「お父さんが城下町に行ってきてほしいんだって」
「今日?別にまだ納品する日でもないだろ?」
「それもそうなんだけど…うーん、何でかしら。ごめん私も分からないの」

ボウさん、何を考えてるのだろうか。イリアの家まで行って話を聞いてきたけど、ただの買い出しだった。チーズと、パンと牛乳。あと人参とじゃがいも。それくらい自分で買ってくればいいのに。断る理由もなかったし、俺はエポナにまたがり城下町へと向かった。こんな寒い中遠いところに連れていくことに罪悪感を感じていた。







「あとはパンを買えばいいかな」

両手に溢れんばかりのチーズ、牛乳、人参、じゃがいもを抱える。こういうとき、いつもならnameが半分持ってくれていた。ああ、しっかりしろよ俺。落とさないよにゆっくり歩きながらパン屋へと向かう。

「いらっしゃいませー!わっ、すごい大量に持ってますね大丈夫ですか?半分持ちますよ?」

聞き覚えのある声に俺は驚いて持っていたじゃがいもをゴトゴト落としてしまった。今、声…あの声。我に返った俺は落としたじゃがいもを拾おうとしたら店の店員が既に拾ってくれていたようだった。

「大丈夫ですか?これ、もっと持ちやすいようにまとめます?」

拾ってくれたじゃがいもを持ちながら小首を傾げ微笑む店員に俺は息が詰まった。

だって、こんなのおかしいじゃないか。だって、こんなの。

「……………………name……」
「あれっ、お兄さんどうして私の名前を知ってるんですか?」

どこかでお会いしたことありましたっけ?と難しそうな表情をして考え込む。名前も、nameと同じで。どういうことだ一体。容姿だって、全部、nameと瓜二つじゃないか!なんで、なんで、どうして。いるわけがない、ここにnameはいないんだ。いるはずがない。それなのに、どうして、何でnameがここに。

膝から崩れ落ちた俺は立ち上がることなんてできずにいた。店員は驚いてわたわたしている。なァ、name。お前、帰ってきたのか?まさか、そんなわけないよな。

「あ、あの…大丈夫ですか?私、なにか気を悪くさせてしまうようなことをしたのなら謝ります…」
「いや、ごめん何でもないんだ。いきなりごめん、俺が悪かった」
「そ、そんな!こちらこそすみません…」
「………キミが、俺の知り合いにあまりにも似ててさ驚いちゃった」

何度も頭を下げる店員を見てレナード牧師がフラッシュバックする。でも、俺さ、偶然だと思えないよname。黙ってしまった店員の方を見ると、店員の方も驚いたような顔をしていた。

「ぐ、偶然ですね!私も思ったんです!あ、いやきっと私とあなたは初対面なんでしょうけど、あの、何だか、初めて会ったとは思えなくて、なんか、久しぶりに会ったっていうか………」
「……」
「あっ!やだすみません、いきなり変なこと…!忘れてください!」
「ふはっ、」

突然吹き出した俺に店員は豆鉄砲を食らったような顔をしていた。何で笑うんですか!と顔を赤くしながらいう店員を見てたら、また笑いがこみ上げてきた。

「も、もう!忘れくださいよ…!!」
「いや、ごめんごめん。本当ごめん、もう、懐かしくって…」

はあ、と一息吐いたのと同時に、ポタ、と床に雫が落ちた。あれ、まずいな、涙が。目元を隠して店員に再度謝ると、店員は空いてる俺の手に自分の手を添えてきた。

「あ、あの、これもきっと…何かのご縁です。私で良かったら、お話し、聞きます。だから、どうか泣かないでください…」

小さな手で俺の手をやんわりと握る。ああ、もう。こんなはずじゃなかったんだ。心配そうに覗き込む店員の顔が、どうしてもやっぱりnameにしか見えなくて。つい俺は店員を抱きしめてしまった。驚いた店員は、最初は抵抗したものの、やがては俺の頭を抱くように撫でてくれた。ごめん、俺キミのこと都合が良いように利用してる。でも今はさ、すがらせてくれないかなあ。


なあname。お前何考えてんのか知らないけど、あまり俺のこといじめてくれるなよな。俺まだ立ち直れてないし、まだいっぱいいっぱいなんだよ。でも、これが偶然じゃないっつーならさ、俺、ちゃんと前向けるようになるのかな。なあ、name。


外がオレンジに染まった頃、俺は店をあとにした。じゃがいもやら何やらを持ちやすいようにまとめてくれたり、いっぱい食べて元気になってください!って言ってあの店員が大量にパンを渡してくれた。また落ち着いたら彼女にお礼を言いに行こうと思ってる。

あの子が、nameの生まれ変わりっていうか、なんか、そんな感じなら、しばらくすがっててもいいかな。利用することになるかもしれない、いや利用することなる。でも、あの子さ、帰り際に、俺のことマスターって言ったんだよ。驚いたけど、あの子無意識に言ってたのかきょとんとしてたんだ。

name、俺またnameに出会えたんだって思ってる。俺に会いに来てくれたって信じてる。お前のこと、守りきれなかった分、俺、今度はあの子のこと守ろうかなって。

俺忘れない。nameが俺の隣にいてくれたってこと。俺も、nameのこと好きだよ。

name、俺もう泣かないから、お前も泣かないでくれよな。最後の、命令。


20151127 end.
邂逅

TOP

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -